味気ない広告はバフェットのせい? 企業買収が代理店に与える打撃

バークシャー・ハサウェイ会長兼CEO、ウォーレン・バフェット(Krista Kennell / Shutterstock.com)

ブラジルの3Gキャピタルは、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイと協力し、買収活動を行うことで有名な数十億ドル規模の未公開株式投資会社だ。買収された企業には、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)やバーガーキング、ティム・ホートンズ、ハインツ、クラフトなどがある。

ハインツは、バフェットからの多額の資金援助を受けて買収された。3Gキャピタルはその後、クラフトを買収し、2015年にハインツと経営統合させた。統合された事業は、クラフト・ハインツとして株式を公開。株式の27%をバークシャー・ハサウェイ、24%を3Gが所有している。

3Gの経営モデルは、「ステロイドを打ったジャック・ウェルチ」と言えるだろう。全従業員は日々、自分の存在価値を示さなければならない。昇進のスピードは早く、個人の功績によって決まるが、成績の悪い社員は早々に解雇される。予算はゼロベースで、1年以下の周期で容赦なく評価され、価値がないと判断された経費は切り落とされる。レバレッジと過度な効率性を基盤としたビジネスモデルにより、3Gは未公開株式投資会社として史上最大の成功を収めてきた。

クラフトとハインツは、統合から2年未満の間に労働力が20%縮小し、諸経費は40%削減された。その一方で市場価値は630億ドル(約6兆6000億円)から1050億ドル(約11兆円)へと増加。3Gが次に買収する会社をめぐる臆測が飛び交うようになり、次はコカコーラなどの食品企業ではとの見方も出ていた。

だがその答えは、想像を絶するほど野心的だった。3Gとバフェットは、ケチャップのハインツとマヨネーズのヘルマンズという2ブランドを統合すべく、ユニリーバに1430億ドル(約15兆円)で買収を提案。これは史上2位の買収金額だったが、ユニリーバに拒否され、提案は撤回された。

これにより、米企業の役員会には暗い影が投げ掛けられている。最高経営責任者(CEO)たちは、「野蛮な来訪者」から自社や職を守ろうと慌てている。映画『ウォール街』の強欲な投資家、ゴードン・ゲッコーの精神は健在だ。
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編集=遠藤宗生

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