テクノロジー

2018.03.28 12:00

「1兆円上場」達成の米ドロップボックス、創業11年の歩み

(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

2007年創業のファイルシェアサービス「ドロップボックス(Dropbox)」が 3月23日、ついに上場を果たした。テクノロジー企業のIPOとしてはここ数ヶ月で最大規模となった。

買い注文が殺到し初値が決まったのはCEOのドリュー・ヒューストンと共同創業者のアラシュ・フェルドーシがナスダックで取引開始の鐘を鳴らしてから2時間後のことだった。ヒューストンはシャンパングラスを手に取り、乾杯のあいさつを述べた。

株価はこの数週間の相場環境の悪さをものともせず、12時時点の株価は30.9ドルと、公開価格の21ドルを47%上回った。ドロップボックスは、ヒューストンとフェルドーシによって2007年に設立され、わずかな間でシリコンバレーを代表するスタートアップに成長した。

ドロップボックスの評価額は2011年に数十億ドルとなり、2014年には100億ドルを突破した。上場後の同社の時価総額は、初値の29ドルをベースとすると110億ドル(約1兆1600億円)となった。

「市場と投資家は、我々のメッセージによく反応してくれた。世界中で何億人もが利用者し、収益を予測しやすいサブスクリプションモデルであることが高く評価されている」とCOOのデニス・ウッドサイドは話す。

資料によると、ドロップボックスの登録ユーザー数は5億人を超え、その大半は無料でサービスを利用している。課金ユーザー数は1100万人で、平均月額利用料は9.33ドルとなっている。

ドロップボックスが他のソフトウェア企業と大きく異なるのは、顧客獲得コストが圧倒的に低いことだ。同社の昨年の売上は11億680万ドルに達したが、販売費は3億1400万ドルだった。これに対し、競合の「Box」は、5億600万ドルの売上高に対し、3億300万ドルの販売費を計上している。

ウッドサイドによると、3年ほど前にエンタープライズ向けサービスの提供を開始したことがIPOを目指す上で最大の転機になったという。

今回のIPOで最大の勝者は、出資元のベンチャーキャピタルの「セコイア・キャピタル」だろう。セコイアは、上場時点でドロップボックス株式の25%を保有していた。同社は、有望なスタートアップに対し、初期に多額の出資をすることで知られる。

他の出資元としては「Accel Partners」や「Index Ventures」「Greylock Partners」などのVCや、個人投資家のPejman Nozadがあげられる。Nozadはかつてペルシャ絨毯を販売していたが、現在ではテック業界で最も成功したエンジェル投資家の一人となった。約10年前にドロップボックスの創業者らにセコイアを紹介したのはNozadだ。

ドロップボックスは当初から急成長を遂げたことで、外部から多くの資金を調達せずに済んだ。シリーズAからシリーズBまでは3年の間隔があり、シリーズBからシリーズCまでは2年の間隔があった。この間、同社の評価額は急激に膨らんだが、創業者たちや初期投資家は持ち分の希薄化を最小限に抑えることができた。
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編集=上田裕資

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