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そのようにケンブリッジで博士課程の研究に励んでいた頃、ある日本人のエンジェル投資家の方との出会いがあり「研究するだけではなく、会社にした方がいい」と仰って、1億円を置いて帰ってくださりました。その1億円を元手に「日本と世界のためになるような事業を作れ」と。

そこで、その資金を元手に13年末、日本から2人、ヨーロッパから4人採用をして現在の2社の前身となるケンブリッジ・エナジー・データ・ラボを設立しました。研究室よりも実用化を視野に入れた、事業モデルの模索のためのラボです。

興味の赴くままにいくつかのモデルを試しましたが、その中でうまくいったのが現在のエネチェンジとSMAP ENERGYの事業です。15年にエネチェンジ、16年にSMAP ENERGYのプロダクトをスピンアウトし、メンバーも全員移り、ラボを閉鎖しました。そしてケンブリッジを卒業した17年に2社を経営統合しました。

他のビジネスとは異なり、エネルギー業界は巨大で、改革のスピードもゆっくりです。過去約100年にわたりオイルとガソリンに頼ってきた時代は、一昼夜で変わりません。しかし改めて今、車も電化、電気もデータ化に移行しています。電力業界は「100年に一度の変革」を迎えている段階です。16年には電力自由化、17年にガス自由化、20年には発送電分離があります。電気メーターは現在段階的にスマートメーターと呼ばれるデジタルのメーターに置き換わってきており、24年までに完了します。15年から20年後半のスパンで、大きな業界構造の変革があるのです。

それを見据えて、ケンブリッジでは研究に打ち込み、起業に関しても13年の時点ですぐにビジネスではなく、まずは「ラボ」という形で始めました。おかげでこの分野で、少なくとも日本人では誰にも負けない専門性を身に付けることができ、若手では珍しく経産省の省エネ委員会のオブザーバー委員にも声をかけていただくなど、今に生かされていると思っています。

現在は月の半分はイギリス、半分は日本で活動しています。日本とヨーロッパの起業環境の違いは、ヨーロッパではパリ協定の影響もあり、エネルギーベンチャーをはじめ、クリーンテックへの注目度が高い、ということでしょうか。私も電気の消費を効率化するベンチャーとしてヨーロッパで行われるクリーンテック系のカンファレンスにはよく呼ばれます。

また、「Climate-KIC」というEUが出資しているクリーンテック関連のベンチャープログラムがあり、年間20社程ヨーロッパ中から選ばれます。SMAP ENERGYもイギリス枠のひとつとして選ばれましたが、「Forbes 30 Under 30 Europe」の起業家・テックカテゴリー60人の枠に対して、この「Climate-KIC」から13人も選ばれている、といういわば登竜門的なプログラムです。

またクリーンテックには技術が必要になるので、PhD(博士課程)を出た人たちが多い、という特徴もあります。オックスフォードやケンブリッジのラボから派生したアカデミックな色の強いベンチャーが多いと思います。

次回の記事で対談するスーザン・グラハムという女性は、オックスフォードでドローン制御を研究していました。「Forbes JAPAN」5月号(3月24日発売)にも掲載されていますが、今はドローンを使って植林をする会社、バイオカーボン・エンジニアリング社の共同創業者でCTO(最高技術責任者)をしています。

ドローンで穴を掘り、水をやり、肥料まで入れる。ドローンとAI技術を使って、より効率的に世界中に500億本の木を植えることが目標だと言います。NPO法人ではなく、企業からの依頼を受け、ビジネスとして行っています。

これからの対談も、そういった、アメリカや日本とも少し色が異なる、起業家やリーダーたちに会って話を聞きたいと思っていますので、楽しみにしていただければと思います。


城口洋平◎Yohei Kiguchi エネチェンジ、SMAP ENERGY代表取締役会長。ケンブリッジ大学工学部博士課程修了。Forbes 30 Under 30 Europe 2017に選ばれる

構成=岩坪文子

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