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起業家眼科医がみる「医療とイノベーション」


私の知っている数人の研究者もネーチャーサイエンスなどのトップ論文を連発したことがある。しかし、他の研究室で追試ができない。追試ができない研究室は、単に腕が悪くて再現できないのか、そもそもオリジナルデータが間違っているのか。どちらなのか判断するのは容易ではない。

そのうち噂が広がることになる。「あのラボから出てくる研究は信頼できない」という噂だ。

莫大な時間と労力をかけて、実際に調査することはよほどの場合だけである。不満をもった研究者や、正義感の強い研究者による内部告発が発端となり、調査委員会が調査する。ただ、告発した研究者自身の将来性が損なわれるリスクがあるので滅多に行われない。捏造であれ、過大解釈であれ、良い論文があると就職に有利だが、捏造をしていた研究室にいたとなると次の転職に不利に働くからである。

このような技術に投資をする場合は、結局は投資家の目利きに頼るしかない。

正直に研究開発していても、ほとんどの革新的だと思われる技術は実用化の日の目を見ない。革新的な技術のタネと、作り話を区別するのは容易ではないのだ。特にその研究者の思い入れが強ければ強いほど、難しい。

現在、私自身もアメリカで新薬の研究を行っている。そして、投資家とのコミュニケーションには過大な期待を持たせないように細心の注意を払っている。

医薬品の開発成功確率は1/30000であることを積極的に発信し、どんなに夢の技術であっても、ノーベル賞学者が発明した技術であっても、気が遠くなるほど多くの技術が失敗して、ごく少数だけが日の目を見るのである。成功した技術しか世の中に知られることがないので、どれだけ多くの失敗があるかを目の当たりにすることがないというバイアスもある。

ただ新しい治療法を渇望して苦しんでいる患者さんがいる限り、私たちはどれだけ失敗しようが研究開発を諦めない。なぜなら、継続する先にしか成功はないからである。

文=窪田良

スティーブ・ジョブズエリザベス・ホームズピーター・ティールフォードマツダ
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