HTCは今年2月、約10億ドル(約1130億円)でグーグルに同社のスマートフォン事業の一部を売却し、Pixelの開発に携わった2000人のエンジニアらを放出した。アナリストの間からはHTCが、今後さらなるリストラに踏み切る可能性を指摘する声もあがる。
ただし、HTCにも復活の道はある。同社は会社の原点に立ち返りOEM(受託製造)メーカーとして生き延びる道もある。また、新興市場向けに自社ブランドの低価格スマホを強化するのもありだろう。
調査企業「IHS Markit」によると、HTCのスマホ出荷台数は2016年の約550万台から、2017年には約400万台に減少したという。IHS MarkitのアナリストGerrit Schneemannは「今後の2年ほどの間で、HTCは自社ブランドのスマホ製造を、継続するか否かの決断を求められることになる」と述べた。
グーグルに多くのエンジニアを放出したとはいえ、HTCの社内にはまだ多くのスマートフォン関連の技術者が残っている。「HTCはハイエンドスマホの技術者の多くを失ったが、受託製造を行うのであれば十分なリソースまだ抱えている」とSchneemannは話す。
世界のスマホ出荷台数は2017年に14億6000万台だったが、これは2016年から0.5%の減少だった。アンドロイド端末のメーカーらは激しい競争にさらされている。
そんな中、HTCが注力するのがVR(仮想現実)だ。HTCは「Vive」シリーズのVRヘッドセットを販売するのみならず、ショッピングモールでVRアーケードの運営を行っている。HTCは世界のVR市場で昨年、第3位のポジションを獲得した。
さらに、HTCはウェアラブルやカメラ市場に進出するとの見方もあがる。今年2月の「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の基調講演で同社CEOのCher Wangは、VR関連ビジネスの説明に多くの時間を割いた。
「VR市場においてHTCは、単なるハードウェアメーカーではなくコンテンツのプラットフォームを創出していける。HTCはこれまで築き上げたブランド力により、新たなエコシステムを作り出せる」とアナリストの一人は述べた。
市場規模の観点から見ると、VRがHTCに利益をもたらすのはまだ先のことになりそうだ。しかし、HTCにとってVRが今後の会社の命運を左右する、重要な領域であることは確かだ。