「いいかね、私がトランプ陣営に加わったとき、トランプタワーには30名のスタッフしかいなかった。これに対し、ヒラリー陣営には800名ほどがいた。これほど少数では、勝利に貢献したと主張できる人は限られている」
ケンブリッジ・アナリティカは、大統領選で大きな成果を上げながらも、その評価は大きく下がった。「トランプが悪役になったため、我々も悪役になったのだ」とNixは話す。
Nixによると、現在データサイエンスチームには200名が在籍するが、ユーザーに働きかける仕事を行っているのは4名に過ぎないという。「データサイエンティストたちは、全員が修士号か博士号を取得している。私の秘書も修士号を持っている」とNixは言う。
Nixは、2名のデータサイエンティストを紹介してくれた。彼らは開放感のあるオフィスで並んで座り、ディスプレイを熱心に見入っていた。1人は、大統領選の際にテキサス州オースティンにあるプロファイリングチームに在籍し、投票日に次々と入ってくる投票データをシステムに入力していたという。
彼らの近くにあるホワイトボードには数式が所狭しと書かれ、壁にはトランプとペンスのポスターが貼られていた。ポスターには、トランプ陣営の人々のものと思われるサインが沢山書かれており、その上には小さなアメリカ国旗が飾られていた。部屋の角には古い木製のテーブル・フットボールが置かれていた。あまり働きたくない職場というのが、オフィスを見学した印象だった。
トランプ陣営のストラテジストだったスティーブ・バノンがケンブリッジ・アナリティカの取締役を務めたことがあるか尋ねると、彼は頷きながら「この5年間、彼とは毎日話している」と述べたが、詳細は語らなかった。
彼は続けざまに次のように話した。
「昨晩、私は新聞社の経営者たちと会食をしたが、彼らは一様にバノンが嫌いだと話していた。私がバノンに会ったことがあるかと尋ねると、誰も会ったことがなかった」
Nixは、会社への批判を個人攻撃だと受け止めないよう腐心しているが、選挙に携わる仕事をしている以上は避けようがないことだと感じているという。
「一方の候補者を支援すれば、もう一方から恨まれ、その支援者たちの怒りも買う」と彼は話す。
しかし、現在彼は有権者のデータを取得した手法について批判されているのであり、誰をホワイトハウスに送り込んだかは関係がないことだ。これは政治を超えた問題であり、Nixを長らく苦しめることになるに違いない。