バックパッカー世代が築く「回し車のハムスターにならない人生」

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付近にあるカリタンとナクパンのツインビーチを訪れた旅行者の間でも、こうした話が多く聞かれた。出身地はテキサス州、ニューヨーク、欧州各地とさまざまだ。こうした新たなキャリア機会を選択すれば、休暇を柔軟かつ自由に取得し、島巡りを楽しむことができる。欧米諸国など先進国社会の要求から真に解放されたと感じていた人ばかりだった。

しかし、この経験は万人向けのものではない。カリフォルニア州の「ゴールドラッシュ時代」の開拓者たちは、黄金を求めていただけでなく、手に入れるまでの苦労や危険を全て含め、その険しい旅を楽しんでいた。

それと同様、熟練したバックパッカーは、先進国の私たちにはない「筋肉」を持っている。先進国では、生活の大半が不快なものやリスク、細菌を根絶するように作られている。バックパッカーはこうした生活を捨て、ほとんどの人が恐れるような不快な細菌だらけの生活にも耐えている。

こうした開拓者たちは、爪の下に土が入っても、手も洗わず食事を始める。米国のひ弱な子どもたちがほぼ全員、ピーナツやいちごのアレルギーを発症しているような時代に、これは新鮮な(そしておそらく価値のある)変化だ。

宵になると、バックパッカーたちは集まって、産業化時代の煙突が並んでいるかのようにタバコをふかす。こうした冒険者たちが、できるだけ長生きしようと躍起になっていないのも納得できる。神経質な人であれば、デング熱が流行する地域では一晩たりとも過ごせないだろう。

また、バックパッカーたちは自分の身に起きることを全て、禅のような態度で受け入れる。望むところに機会が現れることを求めるのでなく、機会があるところを即座に見つけ、他の人が不便・不快と感じるところに美しさを見出す。

なお、私が最近こうした旅行者と滞在した先述のツインビーチは、地球上で最ものどかな場所の一つだ。私が旅の写真を投稿すると、友人らはうらやましがって「まるで楽園にいるみたいだ」と言う。

「そうだよ」と私は答える。しかし、あまり多くの人が楽園に行かないのには理由がある。到着するまでが一苦労だし、ノミや腸チフス、うだるような蒸し暑さが待っているからだ。しかし現代のゴールドラッシュ開拓者であるバックパッカーにとっては、全てが輝かしい旅の一環だ。

編集=遠藤宗生

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