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2018.05.24

官民学のトップランナーが考える、人生100年時代を生き抜くための「能力開発」

〈人生100年時代のキャリア創造〉
AIやビックデータなどテクノロジーの進化がビジネスを激変させる時代を迎え、働き方も変わりはじめている。そんな時代を生き抜くために、ビジネスパーソンにはどのようなスキルが求められるのか。官・民・学のトップランナーと400名を超えるビジネスパーソンが集ったグロービス経営大学院主催のセミナーを元に、ビジネスパーソンのこれからの生き方と必要な能力を紐解く。


グロービス経営大学院(東京都千代田区 堀義人学長)は3月8日、麹町にある東京校でトークセッションを開催した。テーマは「人生100年時代 ~新しい働き方と求められる能力~」。ゲストに経済産業省の伊藤禎則参事官や、サイバーエージェントの曽山哲人取締役、メルカリの小泉文明社長を迎え、400名を越えるビジネスパーソンが参加するなか、激変の時代を生き抜くための方法について議論を重ねた。

1億総“学び”社会の到来。生涯に渡って、学び続ける時代へ

イベントの第1部では、経済産業省・産業人材政策室の伊藤禎則参事官が、政府が目指す「新しい働き方と社会人教育」をテーマに講演した。

「これからは、1億総“学び”社会が到来します。求められるのは、生涯にわたって学び続けること」。講演の冒頭、伊藤氏はこう切り出した。政府が推進する働き方改革の中心人物である同氏は、これが日本人の働き方を変えるために目指すべき方向だと言う。

政府は働き方改革推進の第1章として長時間労働への規制強化を図った。だが、それだけでは本来の目的である生産性向上は実現しない。そこでキーワードとなるのが、人生100年時代の学び、すなわち教育と就労を交互に行う“リカレント教育”だ。

長時間労働や年功序列、終身雇用、新卒一括採用、OJT依存。こうした旧来の日本型雇用システムが大きく変わろうとしている。加えて、生産年齢人口が減少し、高齢者の増加で人手不足が恒常化する一方で、AIやビッグデータ、IoT、ロボット技術のブレークスルーが起こり、第4次産業革命の波が押し寄せている。これまで不可能と思われていたことが可能となり、産業構造と就業構造が劇的に変わろうとしているのだ。



「2007年以降に日本で生まれた子どもの50%以上は、107歳まで生きることになる」。政府主催の「人生100年時代構想会議」に有識者として参加するロンドン大学ビジネススクールのリンダ・グラットン教授の言葉だ。同氏は、これまでは誰もが同じように「教育を受け」「仕事をし」「引退して余生を過ごす」という3つのステージを歩んできたが、これからはマルチステージの人生に変わるという。

健康寿命が伸びるに従い、働く期間は長期化し、個人によって生き方は多様化する。長時間労働の是正や副業解禁などは、時代の変化の先駆けといえるだろう。人によって、時間の使い方を選べる時代が訪れつつある。

「これからの時代は、生涯に渡って学び続け、能力を開発することが重要になります。つまり、“リカレント教育”が必要なのです」と伊藤氏は強調する。ここ数年、「AIやロボットに仕事が奪われる」といった恐怖心を煽る言葉がメディアを賑わしているが、冷静に考えてみて欲しい。過去を振り返ってみると、自動車の発明によって御者という職業はなくなったが、タクシードライバーという仕事が生まれた。様々なイノベーションによってなくなる仕事がある一方で、新しく生まれる仕事もある。ただ、これからの時代に新しく生まれる仕事に就くことができるのは、過去の経験にとらわれずに学び続ける人だけだということなのだろう。

企業にとっても人材戦略は、経営戦略の根幹。今や競争力や付加価値の源泉は人材であり、“人財”という資産のROA向上は経営の必須課題だ。人材投資の回収と「働く」と「学ぶ」のスパイラルアップのスピード競争は益々加速していく。社員のスキルの絶え間ないアップデートは、企業にとって働き方改革の一丁目一番地なのである。

一方で、企業が人材育成に力を入れるほど、会社の教育システムに頼り切ってしまう受け身の人と、自ら人生を切り拓くために能力開発する人に、今まで以上に明確に分かれてしまう。「会社にとって今必要な能力を磨くことだけに精を出す人」と、「自分のキャリアにとって必要な能力を磨くことで結果として会社にも利益をもたらす人」に分かれると言ってもよいだろう。

個々に寄り添い、能力を引き出す

第2部のパネルディスカッションでは、前出の伊藤氏や、サイバーエージェントの曽山哲人取締役、メルカリの小泉文明社長、グロービス経営大学院の田久保善彦研究科長(モデレーター)を交え、「これからの時代に我々は何を考え、どう生きるのか」をテーマに議論を重ねた。


写真右から、経済産業省 伊藤禎則氏、メルカリ小泉文明氏、サイバーエージェント曽山哲人氏、グロービス経営大学院田久保善彦氏

人生100年時代、そしてテクノロジーの進化という2つの大きなうねりが日本社会に押し寄せるなか、テック企業のサイバーエージェントでは「才能開花」をキーワードに社員の能力開発を進めている。人事責任者の曽山哲人取締役によると、社員の才能を開花させるためには3つのポイントがあるという。

第1は、裁量。今まで経験したことのない大きな仕事を任せ、そこで頭をストレッチさせ新しい才能を芽生えさせる。第2は、配置。例えば、営業部にいる彼は今の仕事にフィットしているだろうか。営業にいることが才能の開花につながっているだろうかと常に問い続けている。第3は、決断経験。ポジションも配置も変えられないときには、多様な意思決定の経験が重要となる。受け身の人は成長スピードが落ちてしまうので、重要な意思決定をせざるを得ない環境を作ってしまう。

リーダーをどう育てるべきか。経済産業省の伊藤氏は、200社にのぼる調査から、2つのことがわかったという。1つは、経営者自らが人材育成に時間とコストをかけている会社は、リーダーが育っているということ。2つ目は、社員の伸びしろを生み出すためには、適切な修羅場の経験をさせることだという。「特に日本の大企業はかつてと比べて子会社トップなど全体感を醸成できる修羅場が欠如している。人為的にそうした機会をつくることが重要になる」(伊藤氏)。

メルカリの小泉文明社長は、人材育成に大切なのは「社員一人ひとりと、しっかり向き合うこと」だという。例えば、メルカリではリモートワークを基本的に禁止している。「ベンチャー企業は、追い込まれる状況が多々あり、スタッフ全員が互いに向き合い、同じ空気を吸い、みんなで乗り越える経験が大切」だという。



メルカリと同様に、サイバーエージェントでも個人に寄り添う文化を大切にしているが「GEPPO」もそんな取り組みのひとつだ。その名は単に月次報告をローマ字で表したものだが、そこでは、2つの簡単な質問(たとえば、あなたの先月の成果は?/今の部署の状況は?)への回答とフリーコメントの記載を社員に投げかけている。晴れや曇などの天気予報マークで回答する。そのうちフリーコメントも含め、毎月1000件以上をチェックしているという。全身全霊で個人と寄り添うことが「感情報酬」となって、パフォーマンスに良い変化を生み出す。

ここまで企業としての施策をいくつか見てきたが、個人としてはどのように能力を磨けばよいのだろうか。

メルカリの小泉氏は言う。「学生時代は勉強が本当に嫌いでした。何に役立つか全然わからなかったからです。ところが社会人になったら学ぶことが楽しくて。例えば、パートナー企業の価値を上げるにはどうすればよいのか?といった問題を解くために勉強するわけですよ。やはり目的が見えないと行動は伴わない。実務でのアウトプットを強烈に意識すれば、学ぶモチベーションは生まれます」。



そんな小泉氏は自身の経験から、学びのひとつの要素として、「出会う人」がとても大切だと指摘する。いつも同じ人と仕事していると近視眼的になり、視野が広がらないからだ。

「経営者とナンバー2の能力差は広がり続ける」というスタートアップ企業の“あるある話”があるという。経営者はいつも外に出て、さまざまな人と会う。だがナンバー2は社内を任され、それができず、自分の価値を上げることに苦労するようになるというのだ。これは経営者とナンバー2だけではなく、各組織単位でも起こっている。そこでメルカリでは副業を推奨し、今の仕事では出会うことのない人や異なるキャリアを歩んできた人と出会う機会を増やすように勧めている。

経済産業省の伊藤氏もその重要性を指摘する。「花粉の運び手」はイノベーションを担う人材になるというのだ。シリコンバレーのデザイン・コンサルティングファーム、IDEOの共同創業者であるトム・ケリーは、蜜蜂のように外の世界に出かけていき異なる分野の要素を持ち込む人材は、企業にとって競争優位の源泉となる、と説いている。

サイバーエージェントの曽山氏は、「副業はもっと広がるべき」と主張する。同氏は人事部長と兼任で子会社の社長を務めており、動画コンテンツを活用した人事コミュニティの開発を進めている。「YouTuberがアップする動画を日々研究し、動画に詳しくなって、仕事の幅が広がった。人生がさらに面白くなってきた」と話す。

曽山氏や小泉氏、伊藤氏の話を踏まえると、自分が今いる世界とは異なる場に身を置き、さまざまな人に出会うことが能力開発を促進するという点が共通している。

伊藤氏によると、経済産業省では企業の人事権に対応するかたちとして、個人が自ら望むキャリアを構築する権利として「キャリア権」(法政大学の諏訪康雄名誉教授)のあり方を模索しているという。一方、東京大学の柳川範之教授は、「40歳定年制」の導入を唱える。これは言うまでもなく、定年引退を示すものではなく、人は40歳で一度人生を自らリセットするべきだと主張するものだ。

最後に伊藤氏から参加者に送られた言葉を紹介したい。

「人生100年時代。人生は長い。ずっとトップスピードで走り続けることはできない。どこかで、F1レースのようにピットインしてみましょう。そこでこれまでのキャリアを棚卸しし、学び直して、またコースに戻ればいい。こうした営みが、皆さんの新たな才能を開花させるでしょう」

Promoted by GLOBIS text by Hideyuki Kitajima | photographs by Shinobu Ikazaki

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