矢野さんは東日本大震災の際に1年間被災地で活動。ボランティアに来た人々の滞在拠点を運営する中で、場所を通じてコミュニティが広がり、その場所から新たなプロジェクトが生まれる瞬間をたくさん見てきた。その経験から、大学卒業後、高知県嶺北エリアを中心に現在の活動に取り組んでいる。
ひとまきの主な活動内容は、滞在拠点を4軒運営し、全国各地から人生のキャリアに悩む若者の無料滞在を受け入れること。無料というのが矢野さんのこだわりで、滞在費用は取っていない。約2年間の活動で述べ2500人を受け入れ、ひとまきをきっかけに27人が移住、11人が長期滞在している。
NPO法人ひとまきの矢野大地 代表理事(中央)
昨年度までの運営資金は、過去の滞在者や活動に共感してくれたサポーターからの寄付と、産業振興や商品PRなどの行政委託事業から得ていた。今年度からは行政からの受託を辞め、寄付によるサポーター収入によって運営していくという。
「滞在希望者があまりお金を持っていないというのもありますが、お客さんとして扱いたくないという想いがあります。清掃なども自身でやってもらっていて、田舎暮らし体験とかではなく、みんなで生活するために必要なことを、みんなでやろうという価値観です」
滞在費用がかからないと、価値観が合わない人も来てしまうのではないか? そう思われる方もいるだろう。ところが、この滞在拠点は想像を超えるほどの山奥にある。ここまでわざわざくる人なので、その時点でスクリーニングができているのだ。確かにいくら無料とはいえ、「無料だから滞在したい」という人はここまで来ないだろう。
私が主催する「地方創生会議」も和歌山の奥地、高野山で開催している。東京からの移動時間は約5時間。もっと時間がかかる地域もある。
それでも全国から人が集まってくるのは「全国からわざわざ高野山まで行く人とつながりたい」という理由があると思っている。アクセスの良さを売りにするのではなく、わざわざ行くことに価値をつけるという逆転の発想で、人を集めることは重要な視点だ。