そのiPhone X SEが、アップルが3月27日にシカゴで開催するイベントで発表されるとの憶測が広がっている。歴史を振り返ってみると、アップルは2016年の3月に「iPhone SE」を発表していた。当時のアップルは前年度に発売した「iPhone 6S」シリーズの売上不振に見舞われており、失地回復を狙って発売したのがiPhone SEだった。
現在のアップルを取り巻く状況は当時と似ている。昨年発売の「iPhone 8」シリーズやiPhone Xは、期待を大きく下回る売れ行きで、アップルがかつてのSEの成功の再現を望むのは、理にかなっているように思える。
しかし、残念ながら筆者はこの見方に同意できない。今回のシカゴのイベントは「教師や学生のためのクリエイティブなアイデア」をテーマに開催されるものであり、iPhoneの新モデルの発表にふさわしいものではないだろう。
また、今年のiPhone X SEの位置づけは、かつてのSEとはかなり異なるものになることも分かっている。2016年のiPhone SEは359ドルからという低価格で発売されたが、今年のSEは、その倍以上の価格になるとみられている。
つまり、iPhone X SEの価格はiPhone 8とほぼ同等になると予測される。このタイミングでiPhone X SEを発表した場合、iPhone 8シリーズと食い合いが生じてしまうことになり、アップルがわざわざそんな手に打って出るとは思えないのだ。
もちろん、イベントの度に「ワン・モア・シング」のサプライズを用意するアップルが、予想を裏切ってiPhone X SEのお披露目を行う可能性も捨てきれない。また、筆者個人としても、アップルが現行モデルの売上にダメージを与えかねない端末を、思い切って発表すると想像するとワクワクしてしまうのが正直なところだ。
冷静に考えて、アップルがこのタイミングでiPhone X SEを発表する可能性はかなり低い。しかし、筆者はその予測が間違いであることを一方で望んでいる。