本は理解するために読まなくていい 月100冊の読書術

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情報分析は、“分類”である

みなさんは「情報分析」と聞くと、つい「一つの情報からあらゆることを分析する状態」をイメージすると思うのですが、実は「情報分析」という行為の8割は、分析ではなく分類です。つまり、自分が知っている過去の情報のどれかに当てはめるという行為です。情報分析のうまい人や、それを生業にしている人は、 “分類”がうまいんですね。だから、これまで僕がお話ししてきた情報にまつわるハウツーは、全て“情報をどう分類するか”という話でもあります。

例えば、もしトランプ大統領のことを分析するなら、まず政治の歴史をおさえ、本人の生い立ちを調べ、さらに国の歴史や歴代トップの傾向などのあらゆる情報を集め、それをどんどん分類します。で、それを本人を前にして、「あなたってこうですよね」と当てはめていきます。

やっていることは情報の分類にすぎないんだけど、言い当てられた本人は「自分のことを分析された」と思うから、相手は驚きを感じたり、一目置いたりする。それで、自分のことを自分以上に知っているような相手を、取り込んでおこうと思ったりすることもあるでしょう。

少し実践的な例ですが、経営者と会うときは、その会社の歴史や、どんな選択をする傾向があるかを見ますよね。しかし、それ以上に僕が見るようにしているのは“何を捨てたか、何をしなかったか”です。本人が好きなもの以上に、これまで何を捨てたか、という情報を見ていくと、その経営者の傾向を掴みやすくなります。

なぜかというと、一つの選択を捨てる、つまり事業を切り捨てるというような行為は、経営者として非常に胆力のいることだからです。僕の場合、そこを見てから経営者とお会いすると、会話がかみ合うことが多かったです。「どうしてあの選択を捨てたのか」についての質問をすると、相手は非常に喜んでくださるし、捨て切れないからこそのこだわりもまた見えてくる。

大事なのは、情報を分類するフォルダをいくつも持っておくことです。これまでもお話ししたように、「この新聞の使い道って、何があると思う?」と問われたとき、何通りもの答えを用意できるようにする。また、ニュースを見るときも、「あの人ならどう見るだろう?」と常に多くの人の価値観を理解しておくことで、情報を分類できるようになり、分析ができるようになる、というわけです。

尾原和啓の『働き方革命最前線 ─ポストAI時代のワークスタイル』
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文=尾原和啓

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