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スティーブン・ホーキング博士(Photo by Bruno Vincent/Getty Images)

3月14日はアルバート・アインシュタインの誕生日、そして「円周率の日」であり、さらには世界脳週間にも当たる。そしてこの日は今後、世界的な物理学者・宇宙科学者のスティーブン・ホーキング博士が、この美しく神秘的な星を去った日として知られるようになるだろう。

ホーキング博士死去の知らせを聞いた私は、博士と会ったときのことをしみじみと思い出した。約20年前、彼がホワイトハウスで講演したときのことだ。その晩、私が博士から学んだことは、物理学とはほとんど関係がない。それは、人間についての学びだった。はるか昔のことだが、私はその晩のことをはっきりと覚えている。

私は博士の前にかがみ込み「こんにちは」と声をかけた。博士は一人で、車椅子に取り付けられた小さな机にもたれかかっていた。「素晴らしいスピーチでしたね」と私は言った。「あなたが説明すると、物理学が本当に親しみやすくなります。ありがとうございました」

博士はほほ笑み、音声合成装置を通して答えるため視線を移した。私は、非常に疲れる1日を過ごした博士にとっては、きっと返答するのも大変だろうと思い、「お返事は不要ですよ」と言った。

博士は私を見上げ、その深く暗い瞳で私の内側を見据えた。彼の瞳にあったのはブラックホールではない。私は、非常に大きな温かみと思いやりを感じた。彼の目は、私を羽毛布団のように包み、2人の間にはつながりができた。私たちはどういうわけだか、互いを理解したのだ。私は博士の苦しみを感じ、その巨大で強力な魂が小さくゆがんだ体に閉じ込められているのを感じた。

私は、スティーブン・ホーキングになるとはどういうことなのか、と思いを巡らせた。人々に称賛される傑出した人物でありながら、彼は自分に近づいてくる人がいることに驚いているようだった。博士は、ただ自分の愛することを行い、至福の中に生きていた。たとえ人に気づかれなかったとしても、彼はそれを続けていたことだろう。

その瞬間、私の不安は消滅した。自分が世界に通用する人物でないということや、自分が世界でそれほど重要な存在には決してなれないだろうということは、もはやどうでもよくなった。それまで私は、人に見られることが成功だと考えていた。自分は人の目に留まらない、取るに足りない存在だという絶え間ない不安を払拭し、自分が重要な存在だと証明したいと願っていたのだ。そのとき、私は自分のすべてを見透かされていると感じた。

私は、この瞬間、今この時を、ずっと忘れないだろうと思った。スティーブン・ホーキング博士の手に触れることなく、ハンドシェーク(握手)に勝る真の「ソウルシェーク(魂の握手)」をした瞬間だ。

「私たちは皆、異なる存在だ。平凡で、標準的な人間など存在しない。しかし、人間の精神は誰しも共通だ」──スティーブン・ホーキング

編集=遠藤宗生

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