ビジネス

2018.04.05

ダニエル・ピンクが提唱する、21世紀型のマネジメントスタイルとは?

Pressmaster / shutterstock.com


麻野:マネジャーに対してアドバイスがあれば教えてほしい。

ピンク:社員の状態を細かくチェックすることが何より大切なことである、と伝えたい。「今はどんな感じか?」「何か必要なものはあるか?」、この2つの言葉を頻繁に社員に投げかけ、常に状態を確認する。聞くことの分量を増やし、話すことの分量を減らすべきだ。

麻野:「話すよりも聞け」というマネジメントスタイルは非常に面白い。日本企業の経営は、従業員をルールによって縛りつけてきたため、マネジメントやコミュニケーションで従業員エンゲージメントやモチベーションを高める視点がアメリカ企業に比べても非常に薄い。だから、今回のピンク氏の話は100%共感できるものばかりだった。

今、日本では、働き方改革を中心に働き方への関心が高まっている。メインのテーマは労働時間の適正化だが、それだけでは日本企業は、ゆとり教育の後のゆとり労働によって、国の成長にとどめが刺されてしまう可能性がある。改めて、日本は労働時間の適正化と同時に、従業員エンゲージメントやモチベーションの向上が必要だと感じている。

ピンク:労働時間の適正化と、ワークモチベーションや従業員エンゲージメント向上をセットで考える。まさにその通りだと思う。そして、非常に重要なテーマであるとも考えている。日本では具体的な解決策は見えているのか。

麻野:ワークモチベーションや従業員エンゲージメントを高めるためには、まず定量化・数値化することが大事だと思っている。「No measure, No control(計測できないものは制御できない)」と言うように、業績と同じようにエンゲージメントも定量化、可視化しなければマネジメントはできない。

その上で、このデータを経営や人事が把握するだけではなく、現場の管理職にも共有し、日々のマネジメントで活用することが重要だと考えている。私たちが開発したものだが日本にも、エンゲージメントスコアという組織状態を測る指標がある。これは、財務状態を測るB/SやP/Lのように、企業経営における重要な指標になりつつある。

ピンク:それは素晴らしい考えだと思う。非常に興味深い。

麻野:日本企業が真の労働生産性向上を実現するためには、経営者や管理職が「モチベーションの世代間ギャップ」や「従業員エンゲージメントの低さ」に目を向ける必要があるだろう。私は、HR Techを中心としたテクノロジーの進化を用いて、日本という国の最大のリソースである人材および組織のパフォーマンス向上に、貢献していきたいと考えている。



ダニエル・ピンク(右)
◎作家、文筆家。ビジネス関連の主な著書に『ハイコンセプト』『モチベーション3.0』などがある。2018年1月に新刊『When: The Scientific Secrets of Perfect Timing』が発売。

麻野耕司(左)◎リンクアンドモチベーション執行役員(取材当時)。2010年より、現職。13年にベンチャー企業向け投資事業、16年に国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げた。

文=伊勢真穂 通訳=川本麻衣子 イラストレーション=山崎正夫

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