グーグルと同じく米アルファベット傘下の自動運転車開発企業ウェイモでエンジニアリング部ディレクターを務めるサーシャ・アルヌーは先日、マサチューセッツ工科大学(MIT)でゲスト講師として講義を行った際、この法則の変形バージョンを使って同社の自動運転車開発プログラムの現状を説明。同技術開発の最初の90%には10%の時間しかかからなかったが、残りの10%を完了するにはその10倍の労力がかかっている、と語った。
アルヌーの講義は、今までのプロジェクトの複雑性を細部まで鮮やかに描き出し、同社が、そしてそのパイオニア的取り組みに追い付こうとする人々が今後直面する課題についての見識を提供するものだった。彼の講義から学べることは次の5つだ。
1. 産業化には10倍の労力がかかる
研究室でうまく動作する試作車を、道路で使用しても安全な産業用の製品にするには、膨大な時間がかかる、とアルヌーは強調した。「10倍の技術力と、10倍のチーム規模が必要となり、より多くのエンジニアや研究者が協働するための効果的な方法を見つける必要もある。10倍のセンサー能力が必要で、試験方法を含むシステムの全体的な質も10倍に改善しなければならない」
2. 深層学習でアルゴリズムが大幅に進歩
アルヌーは、2010年にグーグルが自動運転車の開発を始めた時点では、ディープラーニング(深層学習)技術が今ほど進んでいなかったと話す。それから数年の間に同技術は進化し、マッピングや認知、シーン理解など、自動運転の重要分野でアルゴリズムが画期的に進展した。
ディープラーニングを利用して路上の画像を分析し、道の名前や番地、信号、標識などの情報を取り出すこともできる。こうしたデータを事前にコンピューター処理し、マップとして車に保存することで、貴重な車上処理能力を節約し、リアルタイムタスクに割ける。
ディープラーニングを通し、リアルタイムタスクも大きな進化を遂げている。例えば信号や他車、障害物、歩行者を特定するためのセンサーデータの解析だ。ディープラーニングにより、周囲の車や自転車、歩行者の取りそうな行動を予測し、それに合わせた走行を支援することもできる。
3. カギはグーグル他部署との連携
アルヌーは、ウェイモの進歩にはグーグルの「機械学習エコシステム全体」が非常に重要だと認めた。これには、AI研究部門の「グーグル・ブレイン」のほか、視覚、発話、自然言語処理、地図情報などの分野で行われる大規模なディープラーニング研究が含まれる。さらに、グーグルのエコシステムからは、機械学習のための特別なインフラやツールが提供される。