4. ウェイモ成功の秘密は試験プログラムにあり
アルヌーは、現実世界での走行とシミュレーション、体系的な試験の3本柱からなる試験プログラムが、同技術のイテレーション(反復)作業と製品化に重要な役割を果たしていると語った。ウェイモの車はこれまで、運転手なしで公道を約640万キロ走行している。これは米国人の年間平均運転距離の300倍で、地球の160周分に相当する。
現実世界の運転も非常に重要だが、それよりも重要なのはシミュレーション能力だとアルヌーは語る。ウェイモのシミュレーション試験能力は2017年の時点で、2万5000台の仮想自動車に実際の道路やその改変版を約40億キロ走行させられる規模だという。
3つ目の要素は体系化された試験プログラムだ。現実世界の運転で起き得るあらゆる場面に遭遇しようとする代わりに、ウェイモは約36万平方メートル規模の模擬都市を作り上げ、自動車の試験を重ねている。この結果はシミュレーションエンジンにかけられ、さらなる試験のため変形バージョンが作られる。
5. ウェイモの次の課題は大きく、困難
アルヌーは最後に、ウェイモを待ち受けるエンジニアリングの課題について言及し、次の大きなステップとして以下の2つを紹介した。
1つ目は、自動運転車の「運用設計領域(ODD)」を、サンフランシスコなどの密集した都心部や、豪雨・雪・霧などの天候にも拡大すること。
2つ目は、アルヌーが「意味論的理解」と呼ぶもので、例としてパリのエトワール凱旋門の環状交差点を挙げた。この交差点は12の道路が合流し、運転が難しいことで有名だ。こうした状況では、認知力や運転スキルだけでなく、現地のルールや期待される行動を深く理解し、他の運転手と常にジェスチャーなどのコミュニケーションや連携を取ることが必要になる。こうした深い推論は、微妙な判断が求められる数多くの事例に対処し、自動運転車の全体的な能力を改善する上で重要だ。
ウェイモが自動運転技術で既に大きな進歩を達成していることは間違いないが、アルノーは講義の締めくくりとして、自動運転の安全性を確保するために必要なインフラ設計やスケーリングの複雑性といった問題に焦点を当てた。
産業化プロセスの最後の90%のうち、ウェイモは現在どのあたりにいるのだろう? アルヌーは明言しなかったものの、講義の最後では、複雑性の問題を示すため、交差点で止まったウェイモ車の周りを子どもたちがアーケードゲームの「フロッガー」のように跳びはねて道路を横断する動画を紹介した。彼はこの動画で、自動運転技術は「待つ価値がある」ものだと示したかったのだろう。