実はシングル中心の風潮は、昔の音楽のあり方に戻ったとも言える。1950-60年代、アーティストはシングルヒットを何枚も飛ばしてから初めて、レコード会社とアルバム契約を結ぶことができていた。一旦人気になると、次は年間2枚のアルバムをリリースすることを課せられた。この方法は一見、粗製乱造を招きそうだが、ビートルズやエルトン・ジョンは後世に残る偉大なアルバムを生み出した。
もっとも今、70年代当時のペースで音楽を作ってリリースする行為は致命的だ。現代のファンは、たった数ヶ月アーティストが姿を見せないだけで関心を失い、別のアーティストに心変わりする。
アップルは先日、「iTunes LP」(アルバム購入者がジャケットやライナーノーツを見られるサービス)の新規受付を停止することを一部の音楽業界関係者に通達した。これは、消費者らが楽曲や動画の詰め合わせ的フォーマットに興味を持っていないことを示している。この状況は今後、デジタル形式のアルバムが音楽の消費パターンを変えるような機能を持つまでは、少なくとも続くだろう。
コンセプト・アルバムを作るアーティストは今も存在するが、稀である。アーティストやレコード会社は現代がシングルの時代である事実を認め、(既存のフォーマットの)アルバムが消費者に求められていない事を認めるべきではないだろうか。