タスク管理ツール「Trello」が実践するリモートワーク

マイケル・プライアー トレロ共同創業者兼プロダクト開発責任者(右)とマイク・キャノン=ブルックス アトラシアン共同CEO


消滅する会議とミスター・ロジャース
 
もちろん、顔を合わせられない不便さはある。ITツールが発達したとはいえ、時差や不安定な通信も障害になる。IBMや米ヤフーのように、リモートワークをやめた会社もある。それでも、無理と決めつける前にできることがあるのでは──。トレロは不便さをチャンスに変えようとしている。
 
例えば、1人でも会議室に集まれない場合はビデオ会議に変わる。会議室にいる全員が各自のパソコン画面越しに話すのだ。一見シュールだが、皆が同じ環境に身を置くことで一体感が生まれるという。
 
トレロを使って会議の数も減らそうとしている。事前に設定された会議の日に向け、参加者がトレロのカードに議題に関する情報や質問などを書き込んでいく。すると、回答やアイデアが出てきて、会議をする意味がなくなり、“自然消滅”することも。
 
また社員が年に1回会う機会も設けている。プエルトリコやアリゾナ州などに集まり、一緒に過ごすのだ。互いの事情がわかれば信頼関係が育まれ、仕事の近況を話し合うことでアイデアが生まれる可能性もある。ブラジルから参加するオハネシアンも「コミュニケーションによって生産性が上がり、見聞きした働き方のアイデアを自分の生活に応用するようになった」と話す。

「ミスター・ロジャース」という試みも面白い。これは週に1回、アトランダムに選ばれた社員同士が15分程度ビデオを通じて話し合うというもの。そこで話し合ったことを社内のデータベースで共有し、新たな議論やアイデアに結びつけている。
 
とはいえ、プライアーは「リモートワークの目的が人材採用や仕事の効率化だけとは思ってほしくない」とも語る。

「通勤している社員も営業の外回りや家族の病気など、社外で仕事をしたいときがあります。工夫次第でどこにいても生産性を失わずに働くことはできるはずです」


マイケル・プライアー◎タスク管理ツール「トレロ」の共同創業者兼プロダクト開発責任者。2000年に友人のジョエル・スポルスキーと、米ニューヨークでIT起業フォグクリーク・ソフトウェアを創業。IT技術者向けコミュニティ「スタック・オーバーフロー」や「トレロ」などを開発。14年の分社化を機に、トレロのCEOに就任。17年1月、豪IT起業アトラシアンに買収された後は現職に就いている。

文=井関庸介

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