しかし、この大会はボイコットされるべきだ。あるいは開催地を変更するか、中止すべきだ。倫理的な観点から見て、ロシアでの開催は茶番だ。ロシアはFIFA(国際サッカー連盟)が目指すサッカーを通じた国際親善や各国の協調の促進から、ほど遠い行動や政策を取っている。
各国が対応を検討
英南部ソールズベリーで3月上旬、ロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリと娘のユリアがショッピングセンター内のベンチで意識不明の状態で発見された。この事件は神経剤を使った暗殺未遂だったことが確認されているが、地元の警察官やおよそ500人の周辺住民の命が、深刻な影響を受ける可能性もあった。
英国ではテレーザ・メイ首相や政府関係者をはじめ、多くがロシア政府の関与を指摘している。そうした中で同国紙サンは、事件の背後にロシア政府の関与があることが判明すれば、「英国とオーストラリア、ポーランド、日本は“協調した対応”の一環として、W杯への参加をボイコットする可能性がある」と報じている。
前回大会の優勝国であるドイツをはじめ、その他各国の政府関係者も同様にボイコットの可能性について検討しているとされる。各国政府が自国のサッカー協会に対し、W杯参加を取りやめるよう要請する可能性があるということだ。
ドイツ紙ビルトは代表チームのメンバーを取材、「それぞれの良心に照らして考えた場合、ロシア大会への出場をどう考えるか」について意見を聞いた。取材の際に記者は、シリアのグータ地区へのロシアによる攻撃の被害の様子(空爆による犠牲者は同地区だけで1000人を超えている)や、ロシアがウクライナ東部に軍事介入していること、スポーツの多くの種目で国家ぐるみの選手のドーピングが行われていたことなどについても言及した。
ビルト紙の編集長は、代表チームは大会をボイコットすべきだと主張する。また、メルセデス・ベンツやアディダスなどの自国企業に対し、スポンサーとしての支援を考え直すべきだと訴えている。「ロシアに正しいメッセージを送るという歴史的責任」を取るべきだという。