ネットフリックスは年内にあと3シリーズの、インド向けのオリジナルドラマを予定している。一方で同社の強敵のアマゾンは、昨年7月に第1弾のインド向け作品「Inside Edge」を公開し、今年に入り2作目の「Breathe」のストリーミングを始めている。
アマゾンは昨年インドにスタジオを開設し、合計17タイトルのオリジナル作品を製作する計画だ。ヒンディー語やタミル語、テルグ語にも対応し、ベンガル語やマラーティー語などの地方の言語でも視聴可能な点を売りとしている。
一方でネットフリックスの「聖なるゲーム」には現在のところ、英語とヒンディー語をミックスした1バージョンしか存在しない。
インドではエリート層の人々は英語とヒンディー語を話すが、地元の言語しか話さない人が大半を占めている。しかし、マイナー言語であるテルグ語やタミル語の話者だけでも5000万人以上にのぼっている。
つまり、インドはヨーロッパのように多様な言語に分断された場所なのだ。英語のみでもサービスは可能だが、本当に成功を収めたいならば多様な言語に対応することが必須といえる。
現地メディア「Economic Times」の報道によると、インドのインターネット人口は間もなく5億人を突破する見込みで、西側に開かれた新興市場としては世界最大といえる。中国はもっと大きいが、政府のコンテンツ規制により参入は難しい。インドの動画ストリーミング市場は巨大で、しかも成長スピードが速い。平均収入が低いため、サブスクリプションで得られる売上はまだ小さいが、今後の巨大なポテンシャルを秘めている。
インドの動画サブスクリプション競争では、会員数ベースで見るとアマゾンプライムが、ネットフリックスをリードしている。しかし、アマゾンプライムの価格は安いため、売上額ではネットフリックスのほうが上だ。
だが、アマゾンにとってアマゾンプライムは収益の柱ではない。彼らは動画配信で損失を出しつつも、インド人たちをアマゾンのEコマースプラットフォームに囲いこむことを長期的ゴールとしている。
インドの経済規模は世界5位に
このような理由から、アマゾンはあらゆる言語に対応させたオリジナルドラマをインドの中間層向けに低価格で送り出している。一方でネットフリックスは、エリート層向けにプレミアム価格のコンテンツを配信する。
アマゾンのインドでの戦略は、同社がこれまで米国や他の諸国でやってきたものと同じものといえるだろう。
英国の調査企業「CEBR」はインドが2018年に英国とフランスをぬき、世界第5位の経済規模に成長すると予測した。インドは西洋諸国の企業にとって、最も魅力的で開かれた市場になりつつある。
インドの小売やエンタテイメント市場はまだ未発達な段階にあるが、今後の巨大な成長が見込まれる。アマゾンはその2つの分野に同時に参入し、市場を一気に奪おうとしている。彼らの戦略が正しいとすれば、2020年以降のアマゾンの成長はインドが牽引していくことになるだろう。