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若き日本舞踊家が伝統芸能を考える

ステージ上で踊る姿。サカナクションの全国ツアーも一緒にまわった

いつも立っている国立劇場の奈落とは随分違う、巨大な恐竜の骨格模型のようなステージ下。そこを這うように通ってセリ上がると、歓声の波が奥へ奥へと走っていくのが分かりました。幕張メッセを埋め尽くした2万人の鼓動、汗、熱気。レーザー光線の中を白く畝ねる自分の指先は、スローモーションのように今でもハッキリと脳に焼き付いています。

人気ロックバンド、サカナクションが2013年にリリースした「夜の踊り子」が、私がステージでミュージシャンとコラボするきっかけとなった楽曲です。

私は1849年から代々続く花柳流で舞踊家の家系に生まれました。おもちゃはお扇子、ヨタヨタと立つようなるといっぱいまで肩上げされた着物を着てお稽古を始めました。そんな環境に反発心もありながら、10歳の時祖父の舞台を観て、日本舞踊には人の病をも癒すパワーがあると確信し、日本舞踊家を目指すようになりました。

小さい頃から古典の稽古づくしだった私が、なぜロックバンドのステージで踊ったのか。それは、もっと多くの人に古典芸能に興味を持ってもらいたい、楽しんでもらいたいという純粋な気持ちからです。実際にステージに立った後、応援もあれば様々なお叱りも受けました。しかし、反対の声でステージを降りようと思ったことは一度もありません。

古典も昔は新作だった──これは私が大切にしている考えのひとつです。

江戸で一番熱いアーティストが作り上げた沢山の新作は、400年後の今、小難しい解説と一方通行な評論で、私たちの興味が届く場所から遠く離れてしまいました。私たちの作品を観て手を叩いて大笑いしてほしい。涙を流し、時にはときめいて芝居や踊りを楽しんでほしいと名作を生んできた先人たちが、今日本で古典芸能が腫れ物に触るように扱われていると知ったらどんな気持ちだろうかと思います。

決して、作品が古く荒んで今の人に受けなくなったわけではありません。「昔の人ってすごいな」と、そんな定型文で処理するしかないほど古典はよく出来ていて、面白くて、おしゃれで、カッコいいのです。観てつまらなかったなら仕方ない。しかし、現代人は古典芸能を観て面白いか判断する機会さえ失ったのです。

いま私たちに必要なのは、現代に対応した見せ方で、歩み寄らない芸を解放すること。それを気付かせてくれたのが数年前、サカナクションの幕張メッセ公演と、何万人ものお客様の歓声でした。

文=花柳 凜

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