米国務長官の電撃解任 原因は「マシュマロ効果」にあり

レックス・ティラーソン (Photo by Alex Wong/Getty Images)

私は以前、利用するサプライヤーのうちの1社についての対処に悩むマネジメントチームを指導したことがある。問題は、次のようなジレンマだった。このサプライヤーとの良好な関係を維持することで、コストを引き続き低く抑えるのと引き換えに、ブランドの信頼をリスクにさらすべきか? それとも、ブランドの高い評判を維持するためこの会社との関係を断ち、新たなサプライヤーを探すべきか──?

チーム内では、メンバーの意見が分かれていたことに加え、他に優先すべき課題もあったため、私が指導に入るまでの3か月間、議論が行き詰まっていた。そこで私は「あなたの会社は何で知られていますか」と尋ねた。

答えは疑いなく「ブランド」だった。返答にかかった時間は5秒未満だ。この問題はマネジメントチームだけで解決できただろうか? おそらくできただろう。しかし問題なのは「なぜ解決しなかったのか」だ。

ここで私は、現在マイクロソフトでスカイプのデザイン担当ディレクターを務めるピーター・スキルマンが行った「マシュマロチャレンジ」と呼ばれる実験を思い出した。実験の内容は簡単だ。調理前のスパゲティ20本、1メートルのひも、テープ、マシュマロを1つ使い、2つのグループが競い合ってできるだけ高いマシュマロタワーを建てる。唯一のルールは、マシュマロを一番上に置くこと。

面白いのはここからだ。一つのグループは経営学修士(MBA)課程の学生から成るチームで、もう一方は幼稚園児のグループだった。MBAの学生たちは戦略を立ててアイデアをぶつけ合い、素晴らしい質問を重ねて、独創的な選択肢を複数考案した上で、選択肢を一つに絞ってタワーの建設に取り組もうとした。だが学生らは無残にも失敗した。なぜだろう?

MBAの学生は自分のアイデンティティーにとらわれていた。他のチームメンバーを怒らせるのを恐れたり、他人にどう思われるかを考えてアイデアを言わなかったり、チームにどうすればうまく溶け込み影響力を及ぼせるかや、「影響力のある人」は誰かを見極めようとしたりしていた。
次ページ > MBA学生に勝った幼稚園児チーム

編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事