ただし、将来を見据えたコーナーストーンの学習プログラムは、社員一人ひとりのスキルの拡充だけを目指しているわけではない。チームのなかでそれぞれが自らスキルアップを図りシナジー効果を発揮すること、さらには異なるキャリアを積んだ人間同士が結びつきを深めることで、組織全体のパフォーマンスを高める点に主眼を置いている。人財マネジメントの強化によって、イノベーションをもたらす事業へとつなぐプラットフォームを提供しているのだ。
「かつて我々は企業の価値を売り上げや株価などで判断してきました。しかし、現代の人々は、課題解決につながるソリューション、共感できる商品、夢のある企画を実現する力がある多様性に富んだ企業に期待を込めます。時代に適応できるスキルを身につけた人財を抱えている企業が脚光を浴びるのです。
その好例がセールスフォースでしょう。この企業はAIやITを縦横無尽に駆使するだけで成長しているわけではありません。それらの利便性を最大限に生かして、未来のビジネスに思いを馳せた人間の発想が革新的なサービスをつくり出しているのです。人財が新たな価値を生む社会の到来を予期し、変革を恐れない。今日のデジタルエイジ・エコノミー社会において、人をもっとも大切にしている企業の代表格です。
セールスフォースに限らずアップルやアマゾンなどの革新的な企業は人財にフォーカスを当て、変容する産業構造のなかでも成長を続けることができる組織を形成している。これが世界的トレンドとなってきている『スキルエコノミー』という定義です」
スキルエコノミーの時代に企業が考えなければいけないこと「私たちが関わった企業のCEOに話を聞くと、誰もが新規事業を最終的に成功に導いたのは、自社が抱える社員のパフォーマンスだったという答えが返ってきます。いままでにない製品を生み出す原動力は、社員のエンゲージメントだったというわけです。ならば、経営者サイドは、彼らが存分に能力を発揮できる環境を用意しなければなりません」
一定のスキルを身につけ、実績を積んだビジネスパーソンは、会社から用意されたタスクをこなすだけでなく、自らのキャリア形成の可能性が広がる環境を求めるものだと、シャーは言う。自分のスキルをさらに磨きたい、常に自分は変わり続けたいと思う社員こそが“人財”だとするならば、経営者は彼らの働く環境に対して心を配らなければならない。
「有望な社員が望むのは、自分を成長させてくれる教育環境が企業に備わっていることです。弊社はどのような職種にも通用するラーニング環境を用意し、常に更新しています。
『Realize your
Potential (可能性を引き出す)』というスローガンを掲げ、お客さまとなる企業、あるいは社員の方が求めている要求に応えることのできる学習のためのコンテンツをライブラリー化しています。そのため、社員は自分にあったラーニングコンテンツをプレイリストのように作成でき、時間や場所を選ばず、すぐに体験できるのです」
人財が会社を成長させる鍵となるスキルセントリックな時代では、ビジネスニーズに対して、リアルタイムでサポートすることがもっとも大切だというわけだ。
「時代の変化、社会の変容に対し、私たち自身も成長しなければお客さまの期待に応えることはできません。私たちは、より深くお客さまに寄り添うために、いまなお新たな取り組みを進めています。リンクトインのコンテンツも使えるように提携したのはそのひとつで、ラーニングコンテンツは今後さらに充実するでしょう」
個々のスキルをベースとした経済「スキルエコノミー」。人財による創意工夫は企業間の競争を促進させ、さまざまな新しい経済価値を生み出すだろう。シャーはそこから生まれたサービスが、人が人を支える社会をつくると確信している。
チラーグ・シャー◎米・ジョージタウン大学にて学士号、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。2009年コーナーストーン入社。現在は、同社シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーとして、日本を含むアジア・パシフィックにおける事業戦略を指揮。グローバルにおいては、中小企業向け事業を率いている。
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