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熱量の伝え方

提供:DAN NAKAMURA

私は今、美術系大学院で制作する傍ら、広告代理店でデザイナーとしてプロジェクト事業を担当したり、自身が経営する株式会社でジュエリーやバッグを製造したりしている。自分が関わって作ったモノ・コトを人に伝えることがいかに難しいか、そしていかに楽しいかを実感する毎日だ。

上記のような活動をしている中で、関わる人たちは本当に多岐にわたる。中学生、政治家、大企業役員、投資家、町工場の職人、ショーダンサーなど。当然性別も違えば年齢や価値観も異なる。私は常々、相手の職業や考え方、その日のコンディションなどになるべく合わせた提案方法を心がけている。

私はそんな多種多様な人たちと日々関わり合っている中で、コミュニケーションについて考えるようになった。人によって言葉遣いや態度、服装などを使い分けてコミュニケーションをとっているうちに、何故こんなに想っているのに伝わらないのか、どうやってこの想いを相手に伝えればよいのかと悩んでいる中で、私なりのコミュニケーション戦略が生まれてきたのだ。

人に何かを提案する時、私が最も大切にしているのは、“自分の熱量をいかにして伝えるか”である。実際に話したり、メールやLINEを介してテキストで伝えたり、ちょっとしたお土産を添えたりなど、程度は違えども自分の熱量を伝える方法は様々だ。ここでは、私が熱量の伝え方を工夫し、実際に成功した事例を紹介する。

忙しいスマホユーザーにiPhone型企画書
 

ある日、とあるギャル系ファッションモデルの方への提案があった。初めてお会いする相手で、とても忙しい方だと聞いていたので、休憩中にスマホをいじる時間に読んでほしいという想いから「iPhone型企画書」を作った。発泡スチロールをiPhone型に切り抜き、待ち合わせ時間の15分後(打ち合わせが始まって企画書を渡すタイミング)の時間をプリントし、企画内容をスライドにしてめくる形の企画書。画面をめくるにしたがって右上の充電表示も減り、最後のスライドは真っ暗で充電が切れた画面にした。

正直とても手間がかかる作業であるが、それでもやることによって熱量が伝わるし、これをフックに色々なコミュニケーションが生まれる。会議室で膝を突き合わせ、通常のA4用紙に印刷した企画書を見せながらビジネストークをするよりも相手との心的距離感が縮まり、結果的にも良い方向へ向かうことが多い。ちょっとした工夫と遊び心で、記憶に残る提案になるのだ。

喫煙所でも読めるようなタバコ型企画書
 


アパレルの店舗に対して提案をした時のこと。業務中に接客の邪魔はできないので、どうすべきか考えた私は、合間のタバコ休憩に目をつけた。短い時間で気軽に、かつ興味を持って読んでもらえるために、相手が吸っているタバコの銘柄で「タバコ箱型企画書」を作成。記載してあることは、正直メッセンジャーなどで事足りる内容だ。しかし、そうではなくあえて手間がかかるこの形で作ることによって、相手に対する自分の想いと熱量を伝えることができると思った。
 
この時提案したことは残念ながら企画段階で終わってしまったのだが、5年間ほど経った頃、この企画書を知った別の会社から問い合わせがあった。18歳の時に作った企画書が23歳になって別の形で動こうとしている。熱量は伝えたい相手だけでなく、話の種として周囲の人達に伝播していくものなのだと実感した事例である。

上記2つは特徴的な例だが、提案の機会があるたびに私はその相手に適した形で自分の企画を届けるようにしている。確かに、グラフや写真を使った資料を作り印刷すれば事足りることかもしれない。しかし、それだけでは自分の相手や企画に対する想い、情熱を伝えるには限界がある。

一見ふざけたアイディアのように思えるかもしれないが、こちらの提案が通るか否かは初見の一瞬で決まることも少なくない。私のような実績もあまり多くない若者が大きなことをしようとした時に大切なのは、その一瞬で、相手にどれだけのインパクトを与えることができるかどうかにかかっているのだ。

文=中村暖

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