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アクサ生命 取締役 代表執行役社長兼CEO ニック・レーン 

ハプニングが起きたのは、この写真の撮影中のことだ。場所はアクサ生命が働き方改革を実験的に行うIT部門のフロア。インタビュー中、やや表情が硬かったCEOのニック・レーンのもとに、バンダナを頭に巻いたスーツ姿の個性的ないでたちの社員が近寄ってきた。続いて、インド系の社員も。

社長に直訴でもするのかとオフィスの視線が一斉に集まると、二人は会話を始め、若きCEOと肩を抱いた。オフィスがドッと沸くと、記念写真の撮影会が始まったのだ。

社員と一瞬で打ち解けたレーンだが、実はアメリカ海兵隊出身。2016年にCEOに43歳の若さで就任した異才だ。どんな人物か、社員ならずとも興味をもつだろう。

プリンストン大学卒業後、「4年間の軍役で、沖縄にも駐留。富士の演習場で陸上自衛隊と仕事もしました」と言う。その後、マッキンゼーでセールスとマーケティングを経験し、入社したアクサグループは、生命保険業界で世界最大級の規模を誇る。アクサ生命が拠点とする日本は、グループ内で新契約年換算保険料の14%(2016年度)を占める重要市場だ。

では、海兵隊出身者はどんなマネジメントスタイルを日本のオフィスにもたらしているのか。まず彼は海兵隊の “ファイブ・パラグラフ・オーダー”を例にあげる。これは前線に命令を伝えるもので、5つのパラグラフとは、Situation(状況)、Mission(任務)、Execution(作戦要領、ビジョン)、ServiceSupport(補給支援)、Command & Signal(指揮と通信)。特に重要なのはミッションと、それを達成するためのビジョンだ。

「戦闘中は状況が常に変化します。上の命令を待っていると命取りになることも。しかし、全員がミッションを理解し、どう達成するのかというビジョンをもっていれば、状況に応じて一人ひとりが動けます」

軍隊は徹底した上意下達の組織と思いきや、案外、柔軟で自律的。この組織論は、いまの経営にも反映されている。アクサ生命はこれまでテクノロジーへの投資を中央集権型で一括して管理していた。しかし、現在は「トライブ」と呼ばれる各部門に権限を委譲。現場の判断で効果的な投資ができる体制に変えた。

社員の働き方も自律性を重視。これまでは子どもが病気になって看病が必要になると、社員は休暇を取って対応せざるを得なかった。しかし、業務によっては在宅勤務で子どもの看病をしつつアウトプットを出すことも不可能ではない。

「『会社に来て手のかかるボスのお世話をするより、病児を抱えて自宅で仕事をするほうが仕事が捗る』という声が多かった(笑)。だから在宅勤務もオーケーに。柔軟に各自で判断してもらいます」

文=村上 敬 写真=佐藤裕信

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