株主にはクアルコムの名前も
そこでVegaはニューヨークへ行き、アメリカの投資家と交渉し、「Valor Capital Group」やウーバーの創業メンバーで元CTOのOscar Salazarから出資を得ることに成功した。VegaはSalazarのアドバイスを受け、「トラック版ウーバー」を標ぼうするようになった。
トラックは走行時間の40%を荷物なしで走行しているが、CargoXを使うことで効率性を高めることができる。また、荷主にとっては日単位でトラックの台数を柔軟に増減することが可能だ。
アメリカではCargoXの認知度はまだ低いが、株主には「クアルコムベンチャーズ」や「ゴールドマン・サックス」などアメリカの大手企業が名を連ねる。同社は、これまでに3400万ドル(約36億円)を調達し、年内に社員を現在の250人から400人まで増やす予定だ。
Vegaによると、CargoXは今後数ヶ月以内にブラジルでトップ5に入るトラックオペレーターになる見込みだが、それでも市場シェアは3%に満たないという。CargoXの売上は、この1年で1億1500万ドルから2億ドル(約210億円)にほぼ倍増しており、このペースで成長を続ければ2021年には10億ドルに達する可能性も十分ある。
CargoXが将来的にアメリカに進出した場合、シリコンバレーのスタートアップとの熾烈な競争に晒されることになる。アメリカのトラック運送業界は、2015年の売上高が7260億ドル(約77兆円)、貨物量は100億トン以上、トラック運転手の数は350万人だった。
ウーバーは数年前にこの巨大市場に目をつけ、自動運転トラックの運行を開始したほか、トラック運転手と運送業者をマッチングする「Uber Freight」を提供している。また、ジェフ・ベゾスやビル・ゲイツが出資するシアトルのスタートアップ「Convoy」は、アンハイザー・ブッシュとパートナーシップを結んだ。他にも、トラック運送業者向けに車両管理機能を提供する「KeepTruckin」が、数百万ドルを調達している。
今後、CargoXは他の南米エリアへの進出を目指すが、アメリカ市場には当面参入しない予定だ。「ブラジルだけでも十分困難であり、アメリカに進出する余裕は今のところない」とVegaは話す。
目下のところ、Vegaが最も注力しているのが人材の雇用だ。シリコンバレーとは異なり、ブラジルではテック人材の確保が難しい。それでも、彼はCargoXの技術力に自信を持っている。
「驚くかもしれないが、我々のテクノロジーはアメリカのライバルたちに引けを取らない。しかも、我々の方が先に始めている」とVegaは話した。