キャリア・教育

2018.03.14 16:30

起業家と投資家、「英語教育のグローバルブランド」への二人三脚

(左)ヒトメディア 森田正康、(右)EnglishCentral 松村弘典

(左)ヒトメディア 森田正康、(右)EnglishCentral 松村弘典

2008年末に米国で創業し、松村弘典がスタートアップメンバーとして参画するEnglishCentralは、米グーグル・ベンチャーズなどが出資する英語教育ベンチャーだ。「聞く」「読む」「話す」が効果的に学習できる、1万4000本を超える動画コンテンツとオンライン英会話を組み合わせた総合英語学習サービスを提供している。

インキュベーション事業、投資事業を行うヒトメディアの森田正康は15年、ヒトメディアの子会社をEnglishCentralに売却し、取締役に就任した。


森田:松村さんとは長い付き合い。2009年にEnglishCentralの日本法人の役員に就任。その後、15年9月、ヒトメディアの子会社だったオンライン英会話ベンチャーのラングリッチ(シンガポール本社)を同社へ売却しました。その時に投資的な判断として、売却額4億円程度を現金取引ではなく、現物出資的に株式交換しました。既存株主に「現金化しない」ということを説得するところまで含めての投資判断でした。

松村:森田さんには度々アドバイスをもらっていた信頼関係があるので、M&A(合併・買収)はスムーズに進みました。我々が提供している動画学習は、最終的に「人と話すこと」が重要。その質をいかに高められるか、ということを考えている時に、講師全員社員で研修も受けている企業を買収することは間違いないだろうという安心感もありました。そして、実際にこの買収が、我々にとって大きな転換点になりました。

森田:松村さんは経営者としてとても細かい。夢しか語らない経営者も多いなか、事業計画や企業価値の数字にリアリティがある。

松村:前職時代、通信系ベンチャーに副社長として経営に中途参画したのですが、経営陣の夢とビジョンが先行して具体的な計画として投資家を納得させることができず、資金調達で苦い思いをした経験がありました。この経験がその後、当社での10年の資金調達や15年のラングリッチ買収などにつながるのですが、当社の経営陣は事業計画や数字の作り方が細かい。鍛えられました。

森田:ベンチャー企業ではなく、大企業の部署のKPI管理をさせたいくらい(笑)。僕自身も上場経験があるからこそ、「上場だ!」と前のめりに発言しているベンチャー起業家に「ここはいいけど、これはうまくいかない。このままでは上場できない」とアドバイスをしたりもしますが、松村さんは反対で、「いつ?」とこちらが聞きたくなるほどです。

松村:森田さんには、ご自身が役員の、ICT学習支援のClassi社との事業提携をはじめ、様々なご支援をいただいた。国内の高校を中心に2000校へ導入される先生、生徒、保護者がつながるサービスで、トップシェアのClassi社に、我々のサービスを提供できるのは大きい。また、現在、200の大学にも導入いただいており、中学校、小学校からの引き合いもいただいています。

森田:EnglishCentralは米国本社のグローバルな企業。世界を目指してほしいですね。すでにトルコ、中国に進出し、最近ではベトナムのテレコミュニケーションの会社と提携したグローバルブランド。これから伸びていく東南アジアをはじめ、ロシアやブラジルなど、どんどん進めていってほしいですね。

松村:僕は一番得意なのは日本市場なので、今後は、まず日本の英語学習者が「みんな使っているよね」という存在になるように持っていければと思っています。

森田:ちゃんとしているでしょう。僕が経営者みたい。僕らは立ち位置が真逆なんですよ(笑)。


もりた・まさやす◎ヒトメディア代表取締役。1976年生まれ。UCバークレー、ハーバード、ケンブリッジなど海外の大学・大学院を渡り歩く。語学系出版社の第二次創業メンバーとして取締役に就任、2006年にはJASDAQ上場。その後、ヒトメディアを創業し、現在に至る。主な投資先は、CODE CHRYSALIS、AMPLE!、DOUZEN、ORIGINAL STITCHなど多数。

まつむら・ひろのり◎EnglishCentral代表取締役社長。1976年生まれ。高校卒業後、シンガポール、英国に留学。オックスフォードブルックス大学情報システム理学士課程を修了し帰国。メイテック、日本マイクロソフト、ニュアンスコミュニケーションズ・ジャパン、通信系ベンチャー企業取締役などのキャリアを経て、2009年より同社に参画。

文=山本智之 写真=平岩 享

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私がこの起業家に投資した理由

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