キャリア・教育

2018.03.15 15:00

オープンイノベーションで開かれる新しい扉|出井伸之


変化の加速、遠心力と求心力

日本がなかなかオープンにならない背景には、封建制からの封建資本主義の影響があるように思う。ひと昔前は、卒業し就職したら定年まで会社に尽くした。その頃は、社会と私たちの生活が同じくらいのスピードで変化していたのだ。しかし今はそんなことは言ってられない。社会が目まぐるしく変わるにつれて企業の存続年数もどんどん短くなり、変化の訪れるスピードが加速している。

インターネットの出現でモノから情報産業へとパラダイム変化が起きたが、日本の社会や企業は技術の持つ遠心力を活用する波についていけず、結果としてグローバリゼーションできなかった。これから来るブロックチェーンの技術の時代では、再び求心力が作用する。遠心力と求心力の新しい時代が訪れると価値観はまたガラッと変わる。これまでと同じでは全く通用しない。

日本は、今後どうしたら真のオープンイノベーションができるだろうか。

それには産業の成功体験で形成されてきた、完璧主義で自前主義をどう変化させられるかが鍵となるだろう。

新たなエコシステムで開かれる扉

アフリカのことわざに、「It takes a village to raise a child.」(一人の子どもを育てるには村中のみんなの知恵と力が必要だ。村全体で育てよう)というものがある。この言葉が、私自身が思い描いているものを実にクリアに表現していて、最近とても心に響いている。

冒頭に話したABCの要素をもっている日本だが、ネクストパラダイムには乗り遅れることなく変わらなければならない。そこでは、「個」で変革や創出を行うよりも、一つの「コミュニティ」となり手を取り合い助け合っていくほうがよいのではないだろうかと思う。効率的に新しいアイデアを生みだす環境で、お互いを有機的に結びつけ、イノベーションを創出する。そういったシステムが日本の社会には必要なのではないかと、私は考えている。

私が代表を務めるクオンタムリープでは今年、イノベーションを実現させる引き金となるプラットフォーム「アドベンチャービレッジ」を創ろうと、準備を進めている。

本当の村ではないが、バーチャルなビレッジには、ベンチャーやスタートアップという“子ども”から、変革を起こそうとしている大企業・中小企業までがいる。さらに村人として、投資しようとするベンチャーキャピタルやエンジェル、古老として大企業の創立者や元社長そして大学の教授などがいることを想定している。この村に国内外から村人が集まるようにしたい。

アドベンチャービレッジでは、村人たちを効果的に結びつけ、あらゆる知のメンバーからもサポートいただきながら、グローバルに通用する新しいビジネスの創出や企業の変革を行う、そんなエコシステムとしていきたい。規模は小さいが、このような一つの試みをこれから行おうと考えている。

The IDEI Dictionary 〜変革のレッスン〜
過去記事はこちら>>

インタビュー=谷本有香 構成=細田知美 撮影=藤井さおり 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力=KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA MIDTOWN

タグ:

連載

出井伸之氏のラストメッセージ

ForbesBrandVoice

人気記事