今回の貿易統計には、見出し担当記者の目に留まるような、特別な注目に値するものはない。米国の貿易赤字は昨年11月の504億ドル(約5兆4000億円)から、12月には531億ドル(約5兆6500億円)に開いたが、特に目立った変化ではない。
この赤字は大半が物品貿易によるものであり、同分野での貿易赤字額は11月の707億ドル(約7兆5000億円)から12月には733億ドル(約7兆8000億円)へと拡大した。そのため、2015年と16年の急速なドル高の影響が遅れて出ただけ、と過小評価してしまうのは簡単だ。
ここで、少し深く掘り下げると、さらなる情報が浮かび上がってくる。米国勢調査局によると、他の一般的な輸出と同様、技術製品の輸出が鈍化したことに加え、コンピューターや通信機器などの一部のサブ部門では輸出が完全に停滞していた。
携帯や半導体の輸出は多少の成長を維持し、特に半導体は過去数年間にわたる輸出量低下に歯止めをかけたものの、2017年のコンピューターとその関連機器の輸出減は顕著だった。こうした技術製品の米国への輸入が昨年の間に8%増加していたことを考えると、なおさら大きな減少ぶりだ。
次にサービス部門の貿易統計を見てみると、米国の技術に関するさらなる危険信号が見えてくる。米国が世界に輸出するコンピューター・通信サービスは増加を続けているものの、昨年の成長率はたったの6%ほどで、それまでと比べて大きく減少した。知的財産と教育サービスの輸出に至っては大きく減少。その一方で外国からの教育サービス・知的財産の輸入は急増し、教育サービスが9.4%、知的財産が11.1%の伸びだった。
米国のこうしたサービスの輸出量はまだ輸入量を上回っているが、相対的な傾向を見れば、米国優位の状況が変化し、その差が急速に縮まっていることが分かる。
このデータは、パニックを起こすようなものではない。しかし、早急に行動を起こす必要がないとしても、この統計は投資家や政策決定者、国家に対し、米国の技術的優位性は大方の予想よりも早く消え去る可能性があると警告している。
この原因は、米国のテック部門が急速に一部の大企業に集中するようになったことかもしれないし、米国の優位性に安心しきったことで、こうした企業の革新的な文化が損なわれたことかもしれない。過去には、他の業界でこうした感情により似たような悪影響が生じたケースもある。
理由が何であれ、こうした傾向が長期間続けば続くほど、米国にかつては独占的に与えられていた技術的優位性を新たに享受する国や地域が増えるだろう。