ビジネス

2018.03.24 15:00

オランダの展示即売会に見る、欧州を熱くする「クールジャパン」


2つ目の要素である欧州と日本の地域産業の直接的な繋がりは、出展者のキュレーションに関連している。MONO JAPANは、現時点では出展企業を広く公募していない。基本的には、中條氏率いるチームが、年数回の日本訪問でモノづくりの現場を訪れ、欧州市場における知見と、自らの美的感覚に基づいて「カッコイイ」「美しい」と思うメーカーやブランドを、キュレーションする。その結果、今回の出展企業はすべて、東京以外に本社を置くメーカーやブランドだった。

出展希望企業を受け入れられなかったり、出展企業数を拡大しづらかったりするため、出展料収入という面ではリスクだが、MONO JAPANはそれよりも「日本のモノづくりー歴史、技法、 用の美、精神、使用法ーの世界を、モノを媒介として欧州に浸透させる」というミッションを優先している。

単なる欧州市場への商品展開が目的であれば、他の商業展示会参加やディストリビューター探しという販路開拓のオプションがある。しかし、モノの販売だけではなく、カルチャーを根付かせることでビジネスの付加価値をより高めたいという狙いがあるからこそ、アート業界のようなキュレーションの実践が必要なのだろう。

3つ目の要素であるMONO JAPANのブランディング戦略は、出展者だけでなく、来場者をも惹きつける魅力の一つだ。たとえば毎年発表されるメインビジュアルは、オランダでも実績もあるグラフィックデザイナーの武田昌也氏が手がけ、毎年異なる出展者のメインプロダクトをフィーチャーしている。


キービジュアル

パートナーシップの選定もブランド力強化の鍵を握る。展示会場であるロイドホテルは、複数のアーティストが内装デザインを手がけ、部屋サイズや星ランクもすべて異なる客室が特徴のデザインホテル。MONO JAPANの出展者は、その個性的な内装を生かしつつ、それぞれの世界観を演出する。普段は一般公開されていないロイドホテルの個別の客室訪問は、来場者にとっての楽しみの一つにもなっている。

広報活動によるブランド力の強化も重要だ。今年は、オランダのインテリア・ライフスタイルマガジンWOTHのPR協力に加え、ナショナル・キャリアであるKLMの機内誌、エル・デコ誌、現地の新聞2紙など、合計で25件の取材があった。こうした現地のプレス、デザイン、アート、建築関連の業界専門家との関係も年々深まっているという。

さらに今年は「コラボレーション」をテーマに、MONO JAPAN自体がブランドとしてのモノづくりに挑戦した。その一つが、オランダのマテリアル・デザイナー、クリスティーン・メンデルツマ(Christien Meindertsma)と、兵庫県の播州織メーカー、阿江ハンカチーフ社との協業で生まれた、MONO JAPANのロゴをグラフィカルに表現したオリジナル商品、ティー・タオル(欧州家庭で一般的に使われるデザイン性の高い織物を使用した大判の布巾)だ。

また、日本の織物メーカー各社と、現地アムステルダムを中心に世界的にファンをもつファッションブランド、ボネ・スーツ(Bonne Suits)との協業で、日本の特徴的なモダン・テキスタイルを使って、Bonne Suitsのシグネチャースーツを仕立て、ファッションショーで披露した。

これらのプロジェクトの背景には、「日欧間のクリエイターをつなげることで双方が学び、クリエイティビティの刺激と新しいトレンドや市場創出につなげたい」という中條氏自身の考えがある。


コラボレーションで生まれたボネ・スーツを身にまとった現地のモデルたち
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文=MAKI NAKATA 写真=MONO JAPAN / Studio Frog

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