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2018.03.24

オランダの展示即売会に見る、欧州を熱くする「クールジャパン」

オランダ・アムステルダムで開催された展示販売会MONO JAPAN。会場の「ロイドホテル&カルチュラルエンバシー」には、熱狂的なオランダ人消費者が多数来場した。


売れなくても「売りたい」と思える場

先述した独自の出展キュレーション戦略も関係して、結果として中小規模のメーカーやブランドの出展が目立つが、今年はハイスペック・ハイエンドのアウトドアブランド、スノーピークが出展していた。

独自の手法で海外展開を進める同社の出展背景には、同じく新潟県の燕三条に拠点を置く、金型メーカー兼ブランドMGNET(まぐねっと)代表取締役の武田修美氏の誘いがあった。MONO JAPANチームの燕三条の訪問をきっかけに、出展案内を受けた彼は、今年の展示会テーマである「コラボレーション」とも繋がる合同出展を提案したのだ。


左から、スノーピークの山井氏、MGNETの武田氏と小林氏

武田氏は、燕三条地域で仕掛ける「工場(こうば)の祭典」の、2017年第5回開催時の実行委員長を務めた人物。同イベントは、燕市と三条市全域において、3つのKOUBA(工場、耕場、購場)を開放し、同地域のものづくりの魅力を発信するイベントで、2017年は4日間で約5万3000人が訪れた。こうした文脈で、武田氏自身、スノーピークの2代目社長、山井太氏との親交があった。今回出展者として来蘭していたスノーピークの山井梨沙氏は、同社長を父に持つ執行役員兼デザイナー。2社の規模は違えど、燕三条のモノづくりを牽引する次世代として悩みや想いを共有していたということもあり、合同出展が決定した。

「2社で燕三条のブランドとしての出展ということで決めました。(すでに信頼関係があった)武田さんからのお誘いということもあり、即決しました」。MONO JAPANの最終日での両者へのインタビューで、山井氏はこのように振り返った。

一方、武田氏は、2社の規模の違いに謙遜の姿勢を見せつつも、「梨沙さんと、スノーピークと一緒に出展することを実現できたのは、今回の最大の成果かもしれない」と語る。

すでに海外展開を進めている両社は、ともに、米国や台湾を筆頭とする海外売上が3割を占めるという。一方で、欧州展開は限定的で、今後の展開も視野にいれた消費者との直接的なインタラクションの場として、MONO JAPANへの期待をかけた。

「(今回)売れてないけど、また次も出たいと思う。可能性を感じた」。直後の成果を受けて、武田氏はこう断言する。MGNETの商品は金型を使った名刺入れ。名刺入れの使用が日本ほど一般的でない欧米市場では、同じ商品をカードケースとして販売しているが、カードケースで一斉を風靡している競合ブランドの商品が思わぬ落とし穴であり、収穫でもあったようだ。

一方、スノーピークは、もともと一般販売をする予定がなく、アパレルを中心とした一部商品の展示にとどまっていた。しかし、武田氏も山井氏もMONO JAPANに来場する「熱狂的なオランダ人消費者」との出会いに、ある種の驚きと感動を得たようだ。

最終消費者との繋がりを大切にする姿勢は、スノーピークの直営店流通戦略に直結している。国内での直営店ビジネスは50%を占め、海外展開の際も直営店を重視し、米国ポートランドとNYCに拠点を持つ。今年後半には、欧州主要都市での直営店オープンを控えている。

「直営店ができて、物流やオンラインショップなどのインフラが整ったら、またMONO JAPANの出展を検討したい。そしてデザイナーとしても、世界中の人たちが必要とするようなもの、iPhoneのようなものを作らなければならない」と山井氏は言う。

売れなくても、売らなくても、「売りたい」と思える場、そして「売りたい」ものを「作りたい」と再認識できる場、それが出展者にとってのMONO JAPANならではの魅力の一つのようだ。後編では、過去3回のMONO JAPANに出展し続け、欧州市場に向けての商品開発や展開戦略を確立しつつある2社の例にとり、MONO JAPANが目指すモノづくりビジネスの新しい姿を見出す場としての可能性について説明する。

文=MAKI NAKATA 写真=MONO JAPAN / Studio Frog

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