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──そうしたイベントやそこから生まれるエネルギーや熱量が、地域のコミュニティやクリエイターにとって大切なのはわかります。あらためてここでお聞きしたいのは、アドビとしてなぜそこにパワーを注ぐのか、ということです。

そうですよね。よく聞かれます(笑)。「それってアドビさんがやってたの?」って。でも、特にDesign Jimotoに関して言えば、別に上司に言われてやっているわけではないのです。日本の現状を考慮した上で、私が「絶対にやるべきだ」と思ったことを、本社のあるサンフランシスコまで直談判に飛んで、形にしたものなので。

私自身もそうですが、アドビとしても「ユーザー目線でのコミュニケーション」を大切にしています。「クリエイターにとってのツール」ということを掘り下げていくと、要は、表現したいものを表現するためのツールということですよね。つまり、表現したいアイデアが主軸としてあるべきで、ツールの立ち位置はサポート側でなければいけません。

アイデアを形にしたい人が好きなときに、好きな方法で制作することができて、その作品が評価されれば、それに付随して自然とツールの利用価値も上がると考えています。これが、私たちがコミュニティを大切にする理由のひとつです。


アドビの日本オフィスに置かれた「Adobe Remix」作品の前で撮影。Adobeの「A」のロゴマークをモチーフにしたイラストが描かれている。作者は、デザイナー兼アーティストのタカハシヒロユキミツメ。

もうひとつあるとすれば、やはり企業にとってのメリットだけを追求していたのでは限界があります。例えば今回、気仙沼でデザインワークショップを実施しましたが、数字だけを追うのであれば、そこじゃないという判断になりますよね。KPIを参加者数ということに置くのであれば、当然人口の多い東京でやった方がいいということになるので。

ただ、それではそのあとにスケールしないと思っています。アドビとして最終的に目指しているのは「表現しやすい社会の創造」です。そういう社会をつくることができれば、結果として自由を大切に働けるクリエイティブ人口が増え、ツールを活用してくれるユーザー数増加にもつながると考えています。

──本当に素晴らしいと思うんですけど、実際にそれをできる会社はそんなにないかもしれないですよね。

そんなことはないですよ! 一番大切なのは「Why」。そしてそこに熱量さえあれば、あとは掛け算の仕方を考えればいいだけじゃないですか。その掛け算の仕方に迷うときは、素直に周りの人に相談します。

私は自分の得意分野ではないことに対してはすぐに甘えます(笑)。「得意じゃないので、ここ助けてください!」って。そういう素直なコミュニケーションをお互いに持てたら、難しく感じられることも意外と突破口を見つけられたりするんですよね。その時に協力してもらうためには、やはり普段から言葉にしてビジョンを丁寧に共有していくことが大切ですね。

──最後に、あらためて武井さんにとってコミュニティマネジャーの仕事とは?

仕事でもなんでも、すべてのことは何かと何かの接点から生まれていくと考えています。私に求められているのは、そうした接点をひとつでも多く作り、そこからさらなるエネルギーや熱量を生むこと、そういう接着剤とか潤滑油のようなものなんじゃないかと。そのコミュニティにとって、個人にとって、企業にとって必要なものを、互いに空気をよく通せるようにする役割ですかね。

コミュニティ「マネジャー」という名前にはなってはいますが、実際は何もマネージしていないです。マネジメントなんて、したくてもできないですよ。だってそれはアドビのコミュニティではなくて、クリエイターのコミュニティなので。むしろコミュニティ・ノット・マネジャー(笑)。そう呼ぶ方が本当は合っているのかもしれないですね。


武井史織◎アドビのクリエイティブ製品Creative Cloudのコミュニティマネジャー。世界100都市以上で開催する延べ3万人のクリエイターが参加するコミュニティーイベント「Adobe Creative Jams」のアジア開催を主宰。また、「デザインの力」と「地域活性」や「教育」を掛け合わせた課題解決型プログラム「Adobe Design Jimoto」を立ち上げ、各地域のクリエイティブコミュニティーや地方自治体と連携し、産業を横断したさまざまな場づくりを手がける。

聞き手=丸山裕貴(BNL)、九法崇雄(Forbes JAPAN) 文=鈴木陸夫 写真=西田香織

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