資産を大幅に減らした一因は、市場の動向だと考えられる。ニューヨークの事業用不動産市場は依然、低迷が続いている。また、トランプの国を分断するような発言やその人柄も、自身のビジネスに影響を及ぼしている。
市場の影響
電子商取引の台頭は、ニューヨークの商業地区の中心である五番街に建つトランプタワーをはじめ、事業用物件の価値を下落させた。トランプが所有する中でも最も広く知られるトランプタワーの価値は昨年、フォーブスの推計によれば4100万ドル減少した。
また、このすぐ近くにあるトランプ・オーガニゼーション所有の6東57丁目の物件は、より大きな問題に直面している。不動産価値の低下に加え、長期にわたって入居していた米スポーツ用品大手ナイキが、移転計画を発表しているのだ。
マンハッタンの不動産仲介業者によれば、ナイキに代わって面積約6040平方メートルのこの物件を必要とするのは、「百貨店くらい」だと見られる。ただ、「店舗を拡大したい百貨店があるとは思えない」という。
政治の影響
一方、大統領が所有するゴルフコースの価値の減少は、ニューヨークの不動産ほど市場の影響を受けていないもようだ。価値を上下させていると考えられるのは、政治の動向だ。
大統領が所有するゴルフ場のうち最大規模の3か所は、トランプ支持派が多い州にある。これらの売上高は合わせて、前年比で5%以上増えたと推計される。だが、対立候補だったヒラリー・クリントンが大統領選で勝利した北東部の州とロサンゼルスのゴルフコースでは、売上高が合わせて約4%減ったと見られている。さらに、トランプが所有する英スコットランドの2つのゴルフ場でも、売上高が減少した。
トランプ・ブランドのライセンス契約や物件の管理を行うトランプ・オーガニゼーションの評価額は昨年、5000万ドル減少したとされる。ニューヨークやカナダのトロントなどでは投資家らが、ホテルから「トランプ」の名前を削除することを要求。市場におけるブランド力の低下が要因となっている。3月5日には、パナマのホテルでトランプの名前が取り外されたと報じられた。
大統領就任の直前、トランプは弁護士を通じて、在任中は外国企業との新規契約は締結しないと明言。トランプ・オーガニゼーションの成長の可能性を、実質的に封じた。その後、同社は「サイオン(Scion)」「アメリカン・アイデア(American Idea)」という2つの国内ブランドを新設する計画を発表したが、新ブランドはこれまでのところ、4件の契約成立を発表するにとどまっている。