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リアルとテクノロジーの「溶け合うところ」調査録

Osugi / shutterstock.com

毎時毎秒「いいね!」する。ハートマークで画面が埋まる。それがどんなに些細なことであっても、自分の中にある琴線に触れたら親指を動かさずにはいられない。私たちはそんな人間に進化した。

ニュースや友人のプライベートな情報を目にしたらハートマーク、食事が運ばれてきたらシャッター、どこかに到着したらチェックインを押す。それはおそらく脊髄反射に近い。

反応することが、その対象へ知的好奇心を抱いたり、愛着を強めたりするトリガーとなる。だからこそ、私たちはこの脊髄反射を起こさせるメディアやコンテンツとの関係性を深めるし、起こさせない相手を好まなくなっている。そしてその対象は、もはやインターネット上に留まらない。

いいね人間向けの鑑賞デザイン

ミュージアムも例外ではなく、この時代のオーディエンスに合わせて変化しようと努力している。「鑑賞のデザイン」はより複雑で変化の速い、高度なプロジェクトになった。

そうした中、独自の仕組みでオーディエンスに最適な体験を提供するのが、米ニューヨーク「クーパーヒューイット・スミソニアンデザイン博物館」だ。彼らが用意するのは、壁にかかれたSNSシェア用のハッシュタグでも、インスタ映えするフォトフレームでもない。訪れた私たちの好奇心と愛着を高めるのは、一本のペン型デバイスだ。


クーパーヒューイット・スミソニアンデザイン博物館で入場時に渡されるペン型デバイス。大きさは30cm程度ある

反応できるミュージアム

このペンはチケット売り場で手渡され、体験がはじまる。ペンを片手に展示室を歩く。気になるモノや好きなデザインを発見したら、その説明文の横についているプラスマークに、ペンを当てぐっと押す。すると、軽い振動とランプによって、そのデータが保存されたことを直感的に理解できる。


各説明文の右上にプラスマークが。

一度この感覚を理解したら最後、わたしも他の来館者も、この仕掛けの虜になった。脊髄反射のように日々、「いいね」しているのと同じ感覚なのだ。

展示物が気になる度、ペンを押し当て収集していく。すると驚くことに、ただ鑑賞しているときよりも展示に興味を持っていた。緻密な柄に顔を近づけてみたり、距離をかえて眺めてみたり……。展示物に対して、どんどん前のめりになっていく。


ペンにもプラスマークがついている

文=横田 結

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