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2018.03.09

中国「吉利汽車」がテスラの強敵になる日

xieyuliang / Shutterstock.com

中国の自動車メーカー、「吉利汽車」が2010年にスウェーデンのボルボを買収したとき、人々は会長の李書福(リー・スーフー)が身の丈を知らない人物だと非難した。当時、吉利は国内シェアが5%程度の新興メーカーで、李は「自動車というのは4つタイヤにソファを乗せたもので、大した発明ではない」との発言で注目を集めていた。

吉利汽車は、1998年に最初のモデル「Haoqing(通称HQ、野心の意)」をリリースした。当時の中国市場は低価格の大衆車が大多数を占めていたが、その中でもHaoqingは最安値を売りにしていた。その吉利が近年、中国でボルボを生産して莫大な利益を稼ぐようになった。

李は先日、メルセデスベンツやマイバッハなど高級ブランドを擁するダイムラーの株式の9.69%を取得した。李は次の一手を企んでいると思われる。

浙江省台州市出身で、「自動車狂」と称される李は、中国市場の変化を的確に読み当ててきた。2000年代は安い大衆車を投入し、2010年代に入ると高級市場にシフトした。中国での乗用車の販売台数は2013年にピークアウトしたが、高級SUVの売れ行きは引き続き好調だ。

中国では14億人の人口のうち、2億人近くが車を保有している。大衆車市場は飽和状態にある一方で、高級SUV市場は依然として高い成長率を記録している。

今後の伸びが期待されるのは、EV市場だ。中国では、プラグインハイブリッド車やEVなどを新エネルギー車(NEV)と呼ぶ。国家統計局によると、2017年のNEV販売台数は、2016年の48万2000台から80万4000台へ急成長している。

自動車業界の統計によると、販売されたバッテリー式電動輸送機器(BEV)の内訳は、乗用車が46万8000台、トラックが19万8000台だった。ちなみに、米国で2017年に販売された全てのBEVの台数は20万台だ。

EV業界ではテスラが注目を集めているが、今後は吉利がテスラを猛追するかもしれない。中国では、大気汚染対策の一環としてBEV購入者に補助金を支給している。中国政府は、2018年から大型で航続距離の長い車を対象に補助金を支給する計画だ。

ボルボは、2019年以降は全モデルをBEVかハイブリッド車にすると発表しており、中国政府のEV促進策は追い風となる。李はまたしても市場の変化を先読みし、有利に競争を進めようとしている。

編集=上田裕資

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