中国深センから映像革命を起こす26歳「Insta360」創業者の野望

Insta360創業者の劉靖康(リウ・ジンカン)は1991年生まれ。南京大学在学中の2014年に起業し、2015年に深圳に渡りInsta360を立ち上げた。


サムスンやリコーを上回る機能性

その結果、約1年の期間をかけて生み出したのが2016年8月に発売の「Insta360 Nano」だった。当時、同カテゴリにはリコーの「THETA」やサムスンの「Gear 360」といった大手メーカーの製品もあった。しかし、Insta360 Nanoは操作の手軽さや求めやすい価格で一気に知名度を拡大。360度動画の普及を図るフェイスブックの推薦プロダクトにも選ばれた。

「サムスンなどの大手の製品に混じって中国の若いスタートアップの製品が選ばれた。フェイスブックやユーチューブで、Insta360の映像を見た人が360度映像の楽しさを知り、製品を買ってくれる流れが出来た」

その後、さらに先進的な機能の搭載を目指し、わずか1年足らずで開発したのが翌年8月発売の「Insta360 ONE」だった。"バレットタイム"と呼ばれる複数のカメラから同時に撮影したような映像が世界を魅了し、発売直後にはアマゾンで売り切れになるほどの人気を獲得。専用アプリを用い、動画から任意の視点の2D動画を取り出す「フリーキャプチャー」機能も装備。被写体を自動追尾する「スマートトラッキング」機能も備えた。

現在の社員数は約200名、年間売上は約2億人民元(約33億円)にまで成長した。大手のカメラメーカーがニッチなジャンルとみなした360度カメラ市場を、Insta360は全速力で切り拓いた。

「今はただ、最高のカメラメーカーになることを目指している。大手にとって360度カメラは一つのジャンルにしか過ぎないけれど、僕らはその分野に全エネルギーを投入し、人々の思い出を残すベストな製品を生み出していく。競争の激しいハードウェア分野で生き残るためにはスピードが大事だ。ユーザーが求めている新しい機能は何かを常に考えている」


写真左のマックス・リヒターは1989年生まれ。ドイツ出身。ダイムラー勤務を経て2015年からDJIの広報を担当。2016年にInsta360に移籍し、バイラルマーケティングに精通したマーケターとして活躍している。
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取材・文=上田裕資 写真=セオドア・ケイ

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