闘いながら少女を先頭へと押し上げる、タフな女たちの気概

映画『ローラーガールズ・ダイアリー』の監督、ドリュー・バリモア(左)とヒロインを務めたエレン・ペイジ(右、Photo by Jeff Vespa/WireImage)


ローラーゲームのワイルドな魅力にすっかり嵌ったブリスは、翌日から自宅回りの道で一人スケートの練習を始め、親には内緒で21歳以上の入団テストを年齢を偽って受け、ハール・スカウツに見事合格。

チームメイトは、聾唖者やシングルマザー、オリンピックを目指して落ちこぼれた人など多彩だが、美人コンテストの出場者と比べればアウトサイダーたちと言っていい。

迎えたデビュー戦で、ブリスは目覚ましい活躍を見せてチームに貢献し、皆に祝福される。そして、気になっていた男子、バンドマンのオリヴァーとも知り合いに。バイト先に訪ねてきたオリヴァーとドライブに出かけ、車のバンパーに寝そべって歌ったり、草原で戯れたりといったシーンは青春そのものの甘酸っぱい気分満載だ。

永久に続くように思われた憂鬱な毎日が一気に明るく開け、自分に自信がついてきたブリスは、それまで何かと彼女をバカにする言動を取っていたハイスクールの面々にも、強気の対応ができるようになる。この「怖いものなんか何もない」「どこまでも進んでいける」という全能感、若い頃に多くの人が一度は味わう感覚である。

チームはコーチの作戦とブリスの健闘で連戦連勝を続け、オリヴァーとの仲も順調に進展。だが、すべてが自分の願い通りになっているように思える裏では、現実に徐々にしわ寄せが出てくるものだ。

倉庫の不法使用で警察の手入れがあり、たまたま飲酒を見つかったパシュは逮捕されて友情に亀裂、朝帰りしたブリスは親を騙していたことが発覚し、大げんかして家出。更には、オリヴァーと親しげな女性の画像をバンドのサイトで発見し、ショックを受ける。

親バレといい失恋といい、我々から見ると「バレるに決まってるでしょ」「バンドマンだけはやめといた方が」と言いたくなる、絵に描いたような展開だ。

ここでブリスを助けてくれるのが、チームメイトのマギーである。彼女は、発達障害の幼い息子を育てているシングルマザー。家出して行く宛のないブリスを自宅に誘う。しかしただ保護するだけではなく、「母親と折り合え」と大人の説得。マギーは「少女を支援する女」だ。

もう一人、ブリスにとって重要な女性は、敵チーム・ローラーズのエース、メイビン。最初から何かと対抗心を見せつけ、試合でも激しく競り合い「敵役」然としているが、実は30を過ぎてスケートを始めたことを告白する。だから17歳で大好きなものを見つけられたあなたは幸運なのだと。ブリスから見れば、36歳でこれだけ堂々と現役を張れるということが希望だろう。メイビンは「少女に勇気を与える女」だ。

ラストのドタバタで、母は自らの敗北を、ブリスは「ママも闘ってきた」ことを認め、親子は和解へと向かう。家族揃っての応援で迎えた決勝戦、俊足のブリスを先頭に出させようとチームメイトたちが敵をブロックする中、小柄な少女は女たちの間をスイスイとくぐり抜けて疾走する。

一番若い女、未来のある女を、結束して前へ前と押し出していく、スネに傷持つ大人の女性たち。現実でもこうありたいものだと思う。

映画連載「シネマの女は最後に微笑む」
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文=大野左紀子

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