米銀行で導入の「会話形AI」が変えるお金とのつき合い方

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金融業界は、AIの導入によってこの数年で大きな技術革新を遂げた。例えば、消費者は顔認識機能を使って金融機関のアプリにログインし、音声コマンドで残高確認ができるようになった。

「Clinc」のCEOで、ミシガン大学でコンピュータサイエンス学部の教授も務めるJason Marsは、ディープ・ニューラル・ネットワークを用いて金融機関向けの会話型AIプラットフォームを開発した。このAIは「銀行用のSiri」とも呼べるもので、銀行の担当者と話すように自然言語による会話ができるのが特徴だ。

「2016年に金融カンファレンスでAIプラットフォームをリリースした際、USAA(米軍関係者の銀行)のDarrius Jonesがデモを求めてきた。彼は、他社製品とは全く異なる優れた機能に驚き、より詳細なテストを要求した。彼らはClincのソリューションを一目で気に入り、すぐにでも導入したいと言ってくれた」とMarsは話す。

Marsによると、AIの導入がうまくいっている金融機関は、そこから直接的利益を得ることよりも、ユーザーエクスペリエンスの向上を目指しているという。

さらに彼は現状の課題として「本物のAI」を導入している企業が少ないことを挙げる。多くのAI企業がチャットボットなど、一見役に立ちそうなプロダクトを金融機関に売り込んでいるが、「誇大宣伝やベイパーウェア(構想段階のソフトウェア)があふれている」という。

金融機関としては、AI企業の宣伝文句を鵜呑みにするのではなく、繰り返しテストを行うことが必要だ。「顧客に約束した通りの体験を提供できなければならない。そうでなければ、グーグルやアマゾンが提供するAIソリューションに対抗できない」とMarsは言う。

「これからの時代は、より多くのテクノロジー専門家たちが金融業界を革新していくだろう。その結果、フィンテック企業の根幹は、グーグルやフェイスブックのようなテック企業に近づいていく。コンピュータサイエンスの専門家たちが、その優れた才能を金融業界に応用していくことで、イノベーションが格段に進むだろう」

Marsは今後もClincの機能の向上に取り組んでいくという。

「我々は、ユーザーが自身の財務状況についてAIに質問をし、優れたインサイトが得られるようにしていきたい。例えば、AIに今月のアマゾンでの購入金額を尋ね、過去との比較や、来月はどうするべきかなどの質問ができるようにしたい。AIとデータ分析の組み合わせで、貴重な知見を得ることができるようになる」とMarsは話した。

編集=上田裕資

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