最も大きな変化のひとつは、写真や動画を活用したビジュアルコミュニケーションへのシフト。女性ユーザーや若年層ユーザーが秀でたそのような領域を、しかし私たちはまだうまく言語化しビジョナリーな議論に接続しきれていないように感じられます。
僕自身は、株式会社電通社内のシンクタンクである電通メディアイノベーションラボに所属しながら、スマホ普及以降のコミュニケーションのかたち、そして社会のありかたを、ユーザー調査や有識者とのディスカッションなどを通じて考察してきました。
そうした中で、この「SNSマーケティングを社会学的に考える」と題した連載を始めることで僕が目指すのは、歴史的なパースペクティブを保ちながら、現代のスマホ社会をより高い解像度で捉え、その知見を発信することです。過去を捉えることで、複雑化する今の社会をより深く考察できると考えます。
そしてもう一つ、ソーシャルメディアについて考えるとき、それを効率的に運用してどのように目的を達成するかという「メディア」的な側面だけでなく、人々のコミュニケーションが編まれ続け、不可思議なことが起こってしまう「ソーシャル」な場の特性にも分析の視点を届かせたいと思っています。
その意味で、ソーシャルメディアマーケティングを社会学的に考えるこの連載は、自然と高度情報社会の奇譚集のようなものになっていくかもしれません。
情報との出会いはググるから「#タグる」へ
2017年10月末に『シェアしたがる心理―SNSの情報環境を読み解く7つの視点―』(宣伝会議)という単著を上梓しました。さまざまなキーワードをもとに、インスタグラムをはじめとする現代のSNS環境を分析しているのですが、その中で中心的な役割を果たしているのが、「ググる」から「#タグる」へという切り口です。
スマホの普及とユーザー数の拡大によって、誰もが発信者となりました。それによって、ただ人とつながりあう場という意味合いをこえて、SNSは「情報と出会う場所」という機能性を帯び始めています。
私たちが2017年に発表した調査リリース(ニュースリリースのURL:http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0213-009153.html)の中でも、若年の女性ほど情報を探すときに検索エンジンだけでなく、SNSを頼る傾向を指摘しました。
電通総研メディアイノベーション研究部「若年層のビジュアルコミュニケーション調査」2016年10月実査:15-34歳の男女1600ss対象
そう、確かに私たちは検索する(=ググる)ことだけに頼らない情報との出会い方を日々体験しているはずです。
例えば広告の世界でも、テレビコマーシャルの最後に「○○○で検索(カチッ)」という画面とナレーションが入ることがこれまで多かったのが、いまでは最後に「#○○○(作品名など)」といったハッシュタグ検索を促すようなタイプのものが出始めていることにお気づきの方も多いでしょう。
そうした変化を受けて、筆者は「#タグる」という情報行動のコンセプトを提唱しています。タグるとは「ハッシュタグ」と「手繰り寄せる」という2つの言葉をあわせた掛詞で、ユーザーが発信する情報をユーザー同士で集めたり役立てたりする情報行動を示しており、ユーザーに主導権が移る時代における情報拡散のかたちを表しています。