SNSマーケティングを社会学的に考える


インスタグラムの躍進は、そのGenerativity(生成力)の高さに支えられている

最後に、「#タグる」を社会学的に考えるもう一つの意義について触れたいと思います。



ハーバード大学ロースクール教授でインターネット法を専門とするジョナサン・ジットレインは、ウェブサービスにおける「Generativity(生成力)」の重要性を説いています。日本語では生成力と訳されますが、それはユーザーがそのプラットフォームにおいてコミュニケーションや表現をどんどん生み出す(Generate)ことができる場の力を指しています。

いまインスタグラムには、才能を持つ個人が発揮するクリエイティビティの溢れた写真や動画がたくさんシェアされています。その一方で、それはプラットフォーム間競争の中でインスタグラムが他のサービスにユーザーを奪われぬよう、ユーザーが力を発揮したくなるGenerativityに満ちた情報環境を日々設計している証でもあるのです。

前述したハッシュタグフォローの機能は、自分がシェアしたものにより他のユーザーを誘引したい(=タグってもらいたい)というモチベーションを引き出しますし、「いいね」した人が上位表示されるようなアルゴリズムの面での工夫も数えられるでしょう。さらにはストーリーズのハイライト機能のように、これまで消えることに価値があった動画を保存可能にすることで、手のかかったハイクオリティなコンテンツをユーザーが生成するように動機づけている…などもその実例です。

先述した自著の中でも、人気のプラットフォームサービスとは、どれも初めはツールとして有用であることが飛躍のきっかけになっている点を指摘しました。初期のインスタグラムも、それほど画質の高くなかったスマホカメラで撮る写真を補うためのフィルターなどが特性として挙げられていたことが想起されます。

インスタグラムはいまいちばんそのGenerativityをうまく設計している場であり、そこで鍵となるのがハッシュタグとユーザー達の「#タグる」実践なのです(それによって生まれていく現象については今後の連載で触れるかもしれません)。

このように個人と情報アーキテクチャの双方を視野に入れて考えることで、見えてくる論点、導入できる視座というものが存在しますし、僕自身はそれを大切にしたいと考えています。

若年層のこうしたメディア行動を考える上で、マインドに過度にフォーカスした考察を見かけることもありますが、ユーザーの情報行動は「ユーザーの気持ち」だけで決定されるものではありません。アーキテクチャによってどう水路づけられているのかを同時に見なければならないはずです。

「#タグる」ことのムーブメントは、それを望むユーザーの心理はもちろん、Generativityを増すよう設計された情報アーキテクチャにブーストされている面もあり、両者が絡み合いながら出来ているベクトルだということが言えるでしょう。

文=天野彬

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