「けれど、その夢をママに話すと彼女は笑ってこう話した。モデルになるなら身長が最低でも、5.7フィート(約173センチ)はないとねって」
ウッズの身長は5.7フィートには全く届かない。彼女は“小人”として生まれたのだ。しかし、どうしてもモデルになりたいというウッズをある日、母親はモデルエージェンシーに連れて行った。
「その時、相手をした女性が薄ら笑いを浮かべながらいった言葉を覚えている。『あなたの野心は立派なものだと思うわ。でも、小人がランウェイを歩くショーは今、この世界にはないのよ』」
その瞬間、ウッズは絶対に夢をあきらめないぞと思った。「だから彼女に言った。今は無理でもいつかね、と」
成長するにつれてウッズはさらにファッションが好きになった。それと同時に、自分の好みに合う服を見つけるのが難しいことに気づいた。そして、2010年に彼女は自分のファッションブランドを立ち上げようと思った。身長が低い女性たちのために、特別にデザインされた服を送り出そう、と。
「私はアメリカで小人専用のファッションブランドを立ち上げた、はじめての黒人女性だった。それは、前例のないことだった」
その4年後、彼女のブランド「Kathy D. Woods Collection」を正式に立ち上げた。「やっと夢がかなったと思うと、涙があふれてきた」
ウッズのブランドの売りは求めやすい価格で、トレンドを取り入れたデザインを実現したところだ。ストレッチの効く素材を用い、体型を問わず着られる服にしている。「太ってても痩せててもフィットする、小さな人たちのための服を実現した」
米国で3万人のニッチな市場
ビジネスを行う上で苦労したのは投資家たちを説得することだった。「この市場はとてもニッチなものだから。アメリカ全体でも3万人ほどの規模しかない」
しかし、その後もウッズは前進を続け、成功をつかんだ。彼女はオバマ前政権時代に2回、ホワイトハウスに招かれている。最初は「障害を持つアメリカ人法(ADA)」の制定記念日に。そして2回目は彼女がイノベーターとして表彰された日だった。
ウッズは「トミー ヒルフィガー」やビヨンセが立ち上げたブランドの「Ivy Park」のイベントにも招かれ、障害を持つ人々とファッションについて自身の考えを話した。
どんな困難にも負けず、物事をやりぬく強さを与えてくれたのは母親だと彼女はいう。「ママは兄たちに比べると、私のことをずっと厳しく育てた。私の人生にはいろんな苦労が待ち構えていることを、彼女は知っていた。私は黒人で、小人で、女性としてアメリカに生まれたんだから」
ウッズは、はっきりと物をいう一生懸命働く大人になった。自分でビジネスを立ち上げたのは自然な流れだった。起業家として最初に学んだのは、全ての人を説得可能なビジネスプランはこの世にないということだ。いくら話しても、分かってくれない人は分かってくれない。
そんなことよりもウッズにとって大事なのは、自分で物事をやり遂げたことだ。「生きていると、色んな選択肢や可能性や変化に遭遇する。人生は自分でつくるものだと思う」