バフェットが駆使する「例え話」の力 今年の年次書簡にも

ウォーレン・バフェット(Photo by Taylor Hill/FilmMagic)


2017年の年次書簡では、自身の会社が同年内に実施した企業買収が少なかったことについて、自分の求めるすべての特性、つまり競争力、有能な経営力、高い収益性、そして最も重要な要素である適正な購入価格を備えた独立事業を見つけるのは難しかったと述べている。取引を正当化するには価格が高すぎたのだという。彼は次に、アナロジーを使いこう皮肉った。

「ウォールストリートのアナリストや役員たちが、そうした類いのCEOに対し、企業買収の可能性について検討するよう要求するのは、成熟しつつあるティーンエージャーの子どもにノーマルなセックスライフを送るよう言うようなものだ」。そのCEOは一旦解き放たれると、企業買収を正当化する何かしらの理由を見つけるだろう、ということだ。

彼のアナロジーを読んだ私は、きっとメディアが飛びつくだろうと思った。案の定、金融情報サイトの「ザ・ストリート・ドットコム(TheStreet.com)」などで取り上げられ、「ウォーレン・バフェット、企業買収好きのCEOをティーンのセックスライフに例える」と伝えられた。

今回の書簡以外で最近バフェットが使ったメタファーの中で、私のお気入りは、米国の不完全な医療制度に対するコメントだ。バークシャー・ハサウェイは今年1月、アマゾンとJPモルガンと共同で、従業員の医療コスト低減を目指したプログラムを立ち上げた。バフェットはこの際、膨れ上がる医療コストを「米国経済に寄生する飢えたサナダムシ」と表現した。

体内を食い荒らす飢えたサナダムシ以上に強い感情を呼び起こすものはあるだろうか? 記憶に残り、注意を引きつける表現だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、見出しにこのメタファーを使って「医療制度のサナダムシ、新たな脅威に直面」と報じた。

バフェットはこれまで、通常の会計報告では使用されないような珍しいアナロジーを使ってきた。しかし彼のアナロジーは、説明内容を伝え注意を引くという目的を達成している。
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編集=遠藤宗生

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