バフェットが駆使する「例え話」の力 今年の年次書簡にも

ウォーレン・バフェット(Photo by Taylor Hill/FilmMagic)

アナリストやバークシャー・ハサウェイの株主らは毎年、ウィットや博識、洞察力に富んだウォーレン・バフェットの年次書簡を読むのを心待ちにしている。私が気に入っているのは、コミュニケーションの生涯学習者であるバフェットが、複雑な金融のトピックを解説するために駆使するメタファーだ。先週末に発表した2017年の年次書簡でも、バフェットは期待を裏切ることはなかった。

バフェットは、投資先の90%が米国内である理由をたびたび尋ねられ、次のようなメタファーで返答する。「America’s economic soil remains fertile.(米国の経済土壌は依然として肥沃なままだ)」。バフェットは、長々と説明すれば書籍数冊分にもなるような複雑な内容を、たった5ワードのメタファーによってシンプルに伝えている。これこそがメタファーの美点だ。

メタファーとは、ある事柄を別の言葉で表現する修辞的技法だ。今から2000年以上前、アリストテレスは著書『弁論術』の中で、説得法の一要素としてメタファーの使用をすすめている。バフェットがこの技巧を大変気に入っているのは、これが現在でも通用するためだ。私たちは生まれつき、自分たちの世界をメタファーで処理するようにできている。メタファーを正しく使えば、ある出来事や状況について、短い言葉で多くを伝えられる。

例えば、バフェットは2017年の年次書簡で、投資家へのアドバイスとして、長期的な投資を繰り返し勧め、株購入のために借金をしないよう警告している。「(暴落が)いつ起きるか誰にも予想できない。青信号が黄色を飛ばして赤へ変わる可能性はいつだってある」。物ごとがどんなに急速に変化するかは、株式市場のエキスパートでなくても理解できる。車に乗ったことのある人なら誰でもすぐに理解できるメタファーだ。

バフェットはまた、思いもよらないメタファーとアナロジー(類推)を使うことでも知られている。バフェットのメタファーは読者の心を掴み、複雑な事柄を短い一文にまとめられる。
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編集=遠藤宗生

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