キャリアと仕事、リーダーシップ全般を担当。


シミノフが、ドアホンを携帯とつなげるアイデアを思いついたのは、ドアホンの音に気づかないことを妻のエリンから愚痴られたときだった。ただの高価な玩具だと思われてしまうのではないかという懸念を抱きながらも、彼は妻の励ましを受けて預金を全て投資し、台湾の工場で初めて5000個のドアホンを製造した。同社は当時、ドアボット(DoorBot)と呼ばれていた。

2013年5月、ある起業家と知り合ったシミノフは、「マネーの虎」の米国版「シャークタンク(Shark Tank)」を試すよう勧められる。同番組のプロデューサーの連絡先を渡されたシミノフは即座に連絡を取り、4か月後に番組撮影に参加。その様子は同年11月に放送された。シミノフは望む契約を得られなかったものの、番組の宣伝効果によって会社は救われた。

シャークタンクに出演後、1か月で売り上げは100万ドル(約1億円)増加したが、宣伝効果と売り上げだけでは、同社製品の画質・音質の悪さや無線LANの接続問題は改善しなかった。

その対応としてシミノフは、9か月かけて顧客の自宅を50軒訪問し、顧客からのメールに全て回答した。彼は半年前まで、無線LANの接続問題などのバグを修正するための自宅訪問を、最低1か月に1回は行っていた。シミノフは「私は徹底的な人間」と述べている。

2014年3月には、同製品の改善を目指し、iPhoneを製造する中国の大企業フォックスコンと契約を結び、再設計で提携するとともに、1個100ドル(約1万円)で最初の3万台を製造する費用をカバーするために融資限度額を拡大。同時にシミノフは資金集めに奔走したが、投資家の一人のハメイ・ワットから、会社名をドアホンの音と自宅周りのセキュリティーの輪を象徴した「リング」にしてはどうかと提案された。

リングが侵入者を撃退することは実証済みだ。リングは2016年、ロサンゼルス市警察(LAPD)との協力の下、住宅強盗被害が多発する同市の中産階級住宅街ウィルシャーパークに同社製ドアホンを40個設置した。リングが網羅したのは同地域の住宅の10%のみだったが、LAPDによると、強盗被害は半年で55%減少した。

シミノフは、フォーブスが昨年12月から数回にわたり行った取材で、今年の新規株式公開(IPO)について予想したり、アマゾンやグーグルにも対抗できると宣言したりと、アマゾンによる買収の可能性を全く示唆してこなかった。

「この巨大企業2社に踏みつぶされるだろうと言われるかもしれない。だが、ドロップボックスやロク、ネットフリックスなど、2社が勝てていない例もたくさんある」とシミノフは語っていた。リングは、そうした生き残り企業の一つにはならないことになる。

編集=遠藤宗生

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