ビジネス

2018.03.05

新旧の産業を破壊するデジタル・プラットフォームの脅威

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一方で経済学の見地から、こうした多面的プラットフォームは「旧来の経済学上のモデルとは異質」と指摘するのが、ノーベル経済学者ジャン・ティロールと、仏トゥールーズビジネススクールのジャン=シャルル・ロシェ教授である。実際、店と消費者のような関係であれば、店は原価や配送料などを計算し、利益を織り込んだ上で値段を設定する。売買は両者間だけで済む。
 
ところが多面的なプラットフォームの場合、複数の種類の顧客がそれぞれに利益を求めるため、各自のニーズに見合った値段設定がされる。そのため、こうしたプラットフォームで成功するには、今までとは異なる非伝統的な戦略が必要となる。

例えば、基本的なサービスや製品は無料で提供し、追加機能に課金する「フリーミアム」や、利用者にあらかじめ料金を還元する「クーポン」などだ。前者は基本サービスに惹かれた利用者が集まり、後者は心理障壁が下がることで利用者が登録しやすくなる。

テクノロジーのさらなる発達と非伝統的で直観に反する戦略を用いることで、冒頭で挙げたIT大手の規模は今後、ますます拡大されることが予想される。 

MITの研究者エリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーは、新著『マシン・プラットフォーム・クラウド』(未邦訳)で「複数のテクノロジーを組み合わせたイノベーションは早い上に安い。それを無料で完璧、そして即効性が高いプラットフォームの力で活かせたとき、業界が革新される」と指摘している。
 
それでは既存産業にできることは何か。世界的複合コングロマリットのGEが進めているクラウドベースの産業用プラットフォーム「Predix(プレディックス)」などはヒントになるだろう。同社のジェフ・イメルト前CEOは、20年までに同社を世界で上位に入るソフトウェア企業へ生まれ変わらせるという戦略のもと、プレディックスの開発を推進。クラウドを基盤にしたオープンプラットフォームで、顧客は自社に必要なアプリケーションを開発できる。

そうしたプラットフォームの上で、ゲーム配信プラットフォーム「Twitch」のように、特定の顧客のインセンティブを優先することで成長率を伸ばす戦略を用いる手もある。

産業の新旧に関係なく、各企業はプラットフォームのメカニズムを理解し、非伝統的でダイナミックな施策を取ることを迫られている。

文=フォーブス ジャパン編集部

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