ビジネス

2018.03.07

成長の階段を踏み外さない組織づくり

Stockbakery / shutterstock

創業期のアマゾンは、従業員数が3年で50倍になった。グーグルは6年で55倍、フェイスブックは5年で20倍。いずれも同期間の収益は200倍以上の伸びを示す。

スタートアップ企業にとって、これほどの企業規模の拡大は目指したい理想の姿と言えるが、実際組織が急拡大するとはどういうことなのか。現在、多くの企業から組織の成長痛に纏わる相談を受けるが、事前に想像できている経営者は多くない。

シード、アーリー、ミドル、レイターと言われる成長は、一般的には次のようなフェーズとなる。
 
・シード=価値訴求。将来性のある事業ドメインを選択するフェーズ
・アーリー=エコノミクス。マネタイズモデルの構築と仕組み化
・ミドル=規模化。オペレーション戦略をもとにPDCAをまわす
・レイター=持続化。システマチックに変化を起こすことで進化する
 
組織づくりの面から見ると、この4段階はそれぞれ異なるとらえ方をしないといけない。前段階と同じ感覚で組織運営をしていると、齟齬が生じてくる。従業員数は増えたのに見合う成果が出ない、社員が定着しない、コンプライアンス上の問題が起こる……、といった壁にあたることはないだろうか。それは人に問題があるのではなく、組織づくりのフェーズの転換ができていないからかもしれない。
 
先の4段階における組織づくりの違いは、次のようになる。
 
・シード=全員野球。創業者の熱量とフラットな組織で活力を出す
・アーリー=戦略性。採用スピードが増す中、ビジネスの伸びが人の成長を牽引
・ミドル=拡大。組織化を進め、ミドル層の充実を進める
・レイター=変化対応。仕組み化を進めると同時に、多様性への対応も求められる

たとえば急拡大を続けるある組織は、創業メンバー3人で立ち上げ将来性あるWebサービスをリリース。その時期には、「このサービスが広がったときにはこんな世界が広がるはず」「このサービスは絶対人をハッピーにする」という話を毎日交わしながら、サービス構築に四苦八苦し、資金調達に汗をかく。
 
途中から参加した数名も含め、いわゆる「創業期の苦しい時期」を共に過ごす中で、「自分が何とかしないと事業が続かない」と頑張る状態。お伺いをたてたり、ためらったりしている余裕はなく、必然的に皆が同じ方向に向かい自律的に動くようになる。
 
ビジネスが拡大してきた2年目からは、さらに人を増やし、3年目には転職エージェントを使って採用活動も始め、知り合い同士のフランクな関係だった組織に、まったく新しい人が加わる。ベンチャーキャピタルからの出資相談も進めていたなかで、紹介による幹部社員も入ってくるだろう。

きっとここまで成功している企業は多いかもしれない。ただここで重要なのは、常に次の成長の課題を予測し、戦略的に準備できるかだ。
 
こういう変化のときに組織づくりの先手をうつことができると、ステージの転換がうまくいく。「これまでこのやり方でうまくいったから」で片づけるのは禁物。創業メンバー側が「内輪」感をもってしまうと断絶が起こりがちだ。

「個の力の集積」から「組織力をいかに発揮するか」への転換時期。施策としては、一人一人の期待役割を明確にするための地道なコミュニケーションや、経営陣の人格を会社としての社格にするため、ビジョンの浸透を丁寧に進めていく。

この頃までは社長が直接様々な部門判断を下すなか、ビジネスが成長し、従業員数も増えるとそれでは追いつかなくなってくる。アーリーからミドル期になる頃には、部門長やマネジャーの任命や権限委譲が進んでいく。

階層を多く設ける組織なのかフラットな組織なのか、その設計は経営方針によるものだ。ただし共通するのは、業務フローや意思決定フローが明確になっていること。それがスピード感を持って進められる源になるはずである。

一方、成長期の企業はすべてが計画通りに進むものではない。イレギュラーの中に新たなヒントがあり、新しい芽を取り入れることで次の発展がつくられるものである。組織づくりも、効率的な仕組み化を進めつつ、多様性への対応(たとえば提案の奨励、新しいタイプの人の採用、様々な働き方の許容など)を忘れずに取りこみたいものである。

文=堀尾司

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事