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2018.03.09

農業革命のために変えるべき「7割のコスト」とは

宮崎の農家も

地方・宮崎で事業をやっていく中で実感した、農業が衰退していく一番の大きな原因は「食材の原価構造」による農家の収益の低さだ。特に、九州の野菜を東京で購入する際の食材コストの7割は流通コストである。

野菜そのものの原価が3割で残りの7割が流通コストになっている。これは産地と消費者との距離が離れていればいるほど流通コストの割合は増えてくる。なぜこのような構造になってしまっているのか。

答えは明白だ。純粋に距離が遠い分、中間に関わる業者が増えてしまい、それによって流通コストと呼ばれる「手数料」が農家の作った野菜に積み上げられていく。

農業という産業を見たときに、「流通」は切っても切り離せられない。「農家が儲かる」仕組みはこの流通コストをどこまで抑え、農家に還元できるかが鍵となっている。

昨今、農業界では、国内でも少しずつアグリテック(農業×テクノロジー)が農家寄りの便利なサービスとして進出してきている。非効率な部分を可能な限りシステム化し、生産性を上げることで収量確保と原価削減を達成し、農家が儲かるようなシステムがアメリカやオランダに続き日本でも生まれているのである。

しかしながら、IoTを駆使した様々な生産効率をあげる仕組みで農家の管理コストを下げることができたとしても、3割の原価部分の中での利益率をあげるだけでは、残りの7割の流通コストを占める野菜の価格に対する影響は少ない。重要なのは、生産性もあげつつ、根本的に解決していくべき「7割の流通コスト」をできる限り抑え農家に還元できる仕組みを作っていくかである。

『ベジリー』ではこれを解決すべく、仕入れからラストワンマイルまでを自社で徹底的に行っていけるような仕組みを生み出した。すると、本来7割かかる流通コストを3割にまで抑えることができた。金額が変わらずにこれができれば、これは顧客にとっても農家にとってもハッピーな仕組みである。

自社で独自の流通網を使い、野菜を集荷して回り、梱包発送し、自社スタッフがラストワンマイルまでやりきるモデルがもっと増えていくことで、有機野菜といった金額の高い印象の野菜たちもよりハードルをこれまでよりも下げて行きつつ、より多くの消費者に購入してもらう機会を増やすことができるだろう。

これからは、硬直化した従来の業界構造を壊すような、いままで類を見ない形で仕入れからラストワンマイルまで自社の流通網でやりきり、今の食材の原価構造を根本から変えようとする意志を持つプレイヤーが、今後生き残っていくはずだ。

しかし本当は、原点である「生産」の部分から見直すことが、真の意味での農業革命に繋がっていく。「農家自身が消費者に直接届けること」が実現していくことが、最終的にあるべき形なのだと思う。

農業における流通革命をスタートアップがリードしていくことで、農業のあり方を変えることができる。その変化によって農家が儲かり、農業そのものの価値が上がり、若者の職業選択の1つになることが私の願いだ。

文=平林聡一朗

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