新たにビジョンファンドに加わった6社の特徴
インターネットの一番の肝は、データをどれだけ集めるのか、どう活用するのかだと思います。産業革命では石油が重要でしたが、情報革命時代はデータが全てです。データを集めるという意味でのIoT、それを活用するのがAI、と孫さんは考えているのではないでしょうか。データをとにかく集めるところに出資している、というのが特徴的だと感じました。
前回の決算報告から新たに加わった6社も、そのような視点で見ると面白いです。
例えば不動産仲介業のCOMPASS。これまでなかなか世に出て来なかったデータを持っていそうです。389%という年平均成長率にも驚かされました。次に欧州で最大の中古車販売のプラットフォーム、AUTO1.com。同様に特徴的なデータを持っている会社です。IoTやスマートデバイスを使い、住宅の建築設計から組み立てまで行うKATERRAもそうです。散歩代行のWag!、中国の保険会社Ping An Health ConnectやPing An Good Doctorも同様に、ユニークな情報を持っているでしょう。
フェイスブックやグーグルで得られなかったデータを持っている会社。なおかつ情報を取るだけではなく、今後のプラットフォームになっていく可能性があるところに出資しているな、と思いました。
ここからが重要なステップで、「その取れる情報を使って何ができるのか」ですが、孫さん本人もまだそこまで考えていないのではないでしょうか。ただ確実に貴重なデータであることは間違いありません。しかもこれが自動的に上がってくる。一旦データが溜まってきて、そこでAIを活用すると、今まで想像もできなかった圧倒的に有能な使い方が見つかってくるでしょう。次の段階で、集めた情報をどう使うのか、という会社への出資が出てくるのではないかと思います。
第二、第三のYahoo! JAPANができる
もう一つ、ソフトバンクグループの強みを感じたのは、日本でジョイントベンチャーを作る仕組みです。
アメリカのYahoo!に投資し、Yahoo! JAPANという合弁会社を作って今のグループの基盤を作ったように、最先端のものを日本に持ってくる、合弁会社を作って持ってくる、という手法です。
これは、日本が中途半端な規模感の国だからできるんだと思うんです。小さくもないが大きくもない。これが本当に大きな国ならば、投資先の会社も自分たちで挑戦したい、となるでしょう。しかし、日本は市場的にもユニークなので、そこに力をかけるぐらいなら、「世界的にもっと重要なところを取りに行った方がいい」と考える会社も多いのではないでしょうか。
そういった意味で、日本のジョイントベンチャーを作る際には、ソフトバンクグループが過半数を持つという形にしても投資先が受け入れやすくなると思います。最先端のビジネスやテクノロジーに投資し、それをソフトバンクグループの国内の営業力や蓄積した日本の市場に関する知見を使って展開できる。
ビジョンファンドの出資先で、中国大手ライドシェアの滴滴出行やウーバー・テクノロジーズもすでに提携が発表されましたが、今後もYahoo! JAPANで成功したような形が増えていって、ソフトバンクグループの新たな軸を生むのが狙いではないでしょうか。本当に賢い戦略だと思いました。