ドラッカースクールで学んだ「一人称」で語ることの大切さ

cendhika / shutterstock.com

2015年から2017年まで、私はアメリカ西海岸、ロサンゼルス近郊のパサデナという町に住んでいた。ロサンゼルスのダウンタウンからハイウェイ110号を20分ほど北上したこの街は、とてもキレイで、風情があって、歩いてだいたいのことがすんでしまうほど便利で、何より安全な街だった。

40歳を過ぎて初めて海外に住む決断をしたのは、それまでほとんどの時間を仕事に費やしていたなかで、人生のリセットが必要だと35歳を過ぎてから感じていたこと、そして、人生の中で本気で学ぶ時間を作らないと、この先充実かつ楽しく生きていけないという思いがあったからだ。

「40歳を過ぎてよくそんなことができるね」「今さら勉強して何になるの?」など、一部の人からは不思議に思われ、色々言われたが、海外に住み本気で学んで本当によかったと心から思えるし、そのおかげで人生が変わった。一方で、少しだけ客観的に物事が見えるようになって、今の状況に対するリアルな危機感も感じるようになった。

マネジメントの父と言われるピーター・ドラッカーが設立したDrucker School of Management(通称:ドラッカー・スクール)はロサンゼルスのダウンタウンから東に50分ほど運転したところにあり、ロサンゼルスにある大企業・NPO・スタートアップなどでシニアマネジメントをしている人たちや、世界各国から学びに来た人たちと一緒に学ぶ、ダイバーシティに溢れるところだった。

そこでの経験のほとんどはもちろん初めてのことばかりで、常に不安や恐れを持ちながらとにかく行動し、失敗から学び次に活かしていくという、極めてチャレンジングで実践的なものだった。この2年間で多くのつながりを作ることができ、何より人生を楽しめるようになったのだが、その中で痛烈に感じたことを今回は紹介しようと思う。

「Who are you?」 (あなたは何者?)
「What is your vision and purpose?」 (あなたのビジョンや目的は?)
「What is your priority?」(あなたは何を大切にしている?)
「What is your strength?」(あなたの強みは?)

上記は教授やクラスメイトから本当によく問いかけられる質問で、大学院を離れたプライベートの場でもよく問いかけられた。恥ずかしながら、私は渡米後半年間ほどは自信を持って答えることができず、聞かれるたびに曖昧さや消化不良を感じていた。

一方、彼らに同じ質問をすると、自信を持って一人称「I(私は~)」で答えてくれた。しかもわかりやすく。日本でよくありがちな、「会社は〜」「上司は〜」というすり替えや他者中心の言い方でなく、常に「私はこう信じている」「○○している」「大切にしているのは○○と✕✕だ」と自分軸で熱心に話す。もちろん彼らも多くの困難を経験しているが、強い軸とエネルギーを持って行動し、成功体験や失敗体験を活かしながら成果に向かって進み、その一連の体験を「自分ごと」として伝えるので、真実味や説得力があった。
次ページ > 自分自身を知らなければ、他人をマネジメントできない

文=稲墻 聡一郎

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事