ビジネス

2018.03.05

7割は不満足のまま? 生産性を上げる働き方のカギ

Piotr Zajda / shutterstock.com

7割の会社が働き方改革を実施したものの、その結果に満足している従業員は3割未満──。デロイト トーマツ コンサルティングが2017年9月に発表した国内238社を対象にしたアンケート調査で、働き方改革の問題点があらためて浮き彫りになった。

なぜ既存の働き方改革では従業員の満足度を高められないのか。そもそもなぜ従業員の満足度を高める必要があるのか。調査の責任者を務めた同社執行役員でヒューマンキャピタルリーダーの土田昭夫氏に、調査結果のポイントと従業員が会社に愛着を覚える「エンゲージメント」を高める方法について伺った。


──働き方改革についてのアンケート結果をどうご覧になりましたか。

一言で言うと、従業員から見た働き方改革の成果や実感が乏しい。企業が実施している改革の一番のフォーカスは時短です。長時間労働をどうやって減らすのか。アンケートでも、長時間労働の抑制が実施施策のトップに来ました。

しかし、長時間労働は「結果」です。仕事が合理化されて、効率的になって時短になる。それが望ましいのですが、今行われている働き方改革の多くが、単純に「何時までに帰りなさい」「休日は休みなさい」など、取りあえず枠に当てはめるタイプの時短です。従業員としては、あまり面白くないですよね。仕事を通じて成長したり、スキルアップしたり、キャリアを築きたい人もいます。また、目の前の顧客により良いサービスを届けたいと思っているのに、「とりあえず早く帰れ」と言われたら、嫌になってしまいます。

もともと働き方改革の目標として、生産性の向上だけでなく従業員の心身の健康や満足度の向上の両方を掲げている会社がほとんどです。生産性の向上はある程度達成されても、もう一つの目標は全然達成できていません。

──単なる時短では従業員も喜ばない。従業員が求めていることはどのようなことでしょうか。

この会社で頑張って働きたい、もっといい仕事がしたい、私はこの会社が作っている製品が好きだ。そういうエンゲージメントを高めることです。エンゲージメントを高める要素はワークライフバランスだけではありません。エンゲージメントを高めるためには、エンプロイー・エクスペリエンス(従業員の経験価値)が重要です。

──エンプロイー・エクスペリエンスとは何でしょうか。

これは、エンプロイー・エクスペリエンスのフレームワークです。要素となるのは、仕事の意義、直属のマネジャーのサポート、職場環境、成長の機会、経営に対する信頼など。様々な要素で成り立っているので、総合的に改善する必要があります。また、極端に悪くなっている部分にはテコ入れしないと、全体のエンゲージメントの向上に繋がりません。



エクスペリエンスは原因で、エンゲージメントが結果です。さらに、その周りに「この会社はこうだ」というカルチャーがあります。カルチャーの結果として起きたエクスペリエンスがエンゲージメントにつながる。例えば、「うちの会社は会議で誰も発言しない。その背景には出る杭は打たれるというカルチャーがある。そのエクスペリエンスを通じてエンゲージメントにネガティブなインプットを与える」という構造です。
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編集=フォーブス ジャパン編集部 インタビュー=成相通子

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