中国ファーウェイのコンシューマー・ビジネス・グループCEOのリチャード・ユーも、それと同じことをスマホ業界で行っているようだ。
筆者は2月25日、スペインのバルセロナで開催の「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の会場で、最新のノートPC「MateBook X Pro」を発表直後のユーに話を聞いた。筆者を含む少数のジャーナリストのグループ取材に応じたユーはまず、記者たちのほとんどがiPhoneユーザーであることを指摘した。
「iPhoneを使っているみなさんに、我が社の『Mate 10 Pro』を試してほしい。バッテリーの持ちはiPhoneよりも全然いいし、ネットワークへの接続スピードもずっと速い」
その後、彼はファーウェイの次のフラッグシップモデルの「P20」について唐突に語りだした。「来月に発表のP20は、カメラ性能において巨大なイノベーションを実現している。他のスマホとは比較にならない性能だ」
ユーはテーブルに置かれた記者のiPhone Xを取り上げて「(他のスマホというのは)このスマホも含めての話だ」と述べた。「P20は本当に優れたスマホなんだ。以前より少し性能が向上したというような話ではなく、ぐんと凄い製品になっている」
彼はファーウェイが優れた製品を生み出せる理由を、「膨大な資金をR&Dに注いでいるからだ」と述べた。「ニワトリが先か、卵が先かという話もあるが、利益が出せていない会社は研究開発に注ぐ資金もないのが現実だ」
筆者はこれまで数百にのぼるテック業界の記者発表に出席してきたが、ユーほど率直に、自社製品の良さを語る役員は極めてまれだ。グループ取材というのは、型にはまった質疑応答が繰り返されるだけの、退屈なものがほとんどだ。
ところが、ユーは思いついた事をその場でどんどん発言していた。驚いたことに、彼は先日報道されたファーウェイが米国進出に頓挫したというニュースについても率直なコメントをくれた。
ファーウェイは間もなく「世界トップ圏内」に
報道によると、ファーウェイは米国の大手通信企業AT&Tと交渉だったが、合意には至らなかった。その背景には米国政府がファーウェイのスマホからの情報漏洩リスクを危惧したことがあると伝えられた。
ユーの話によると、米国政府はファーウェイの競合らの要請を受けて、彼らを米国に入れない措置をとったのだという。
「世界の全ての通信キャリアは我々と提携したいと思っている。しかし、我々の競合企業が政府に要請して、それを妨害したのだ」とユーは話した。
「これはフェアなやり方ではない。彼らはファーウェイが力を持ちすぎることを恐れている。我が社は世界の170の市場に製品を送り込んでいるが、どの国においても問題など起こしていない。なぜアメリカだけが、我が社に問題があるというのだろう?」
ユーはグループインタビューの最後に「ファーウェイは世界市場でまもなく上位2位圏内に入ることになる。今年、もしくは来年には」と述べた。
リチャード・ユーをマイケル・ジョーダンに例えるのは少々無理があるのかもしれない。しかし、彼がジョーダンと同じレベルの激しい闘争心と、全ての勝負において勝つという強い意思を持っていることは確かだ。